眺望が魅力とされて大人気のタワーマンション。その高層階から、ペットボトルや皿などが落とされる事件が多発している。駅前にタワーマンションが林立して「神奈川のドバイ」との異名もある神奈川県川崎市の「武蔵小杉エリア」でも事件が起き、住民に不安を与えている。
報道によると、川崎市の武蔵小杉駅近くののタワーマンションで9月末、路上への落下物が何度も目撃される騒ぎがあり、警察も出動したという。9月24日には陶製の皿が落下して粉々になっていた。その3日後には、ペットボトルが落とされていた。幸い、けが人は出ていないが、多くの通行人が頭上を気にしながら歩く羽目になっている。
高層階から落としたものは、2階や3階からの落下物に比べ、何倍もの破壊力があるというのは常識だ。落とした人物は、その危険性も分かっているはずだが、どんな犯罪になるのだろうか。永芳明弁護士に聞いた。
●もし通行人を狙っていたら「暴行罪」の可能性も
「軽犯罪法1条11号には、『相当の注意をしないで、他人の身体または物件に害を及ぼすおそれのある場所に物を投げ、注ぎ、または発射した者』は、拘留または科料に処するという規定があります。報道によると、神奈川県警は、この条項に該当する可能性があるとして、捜査を行っているようです」
軽犯罪法違反も、犯罪であることには変わりないが、その刑罰は、拘留(30日未満)か、科料(1万円未満)と極めて軽い。だが、場合によっては、それよりも重い罪に問われる可能性があるという。
「もし、仮に、ペットボトル等を落とした人が、通行人を狙っていたとしましょう。その場合は、通行人に対する暴行罪(刑法208条)が成立し、『2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料』に処せられることも考えられます。また、その通行人がけがを負った場合は、傷害罪(刑法204条)となり、『15年以下の懲役または50万円以下の罰金』が課せられることもあります。
ただ、いずれも適用されるのは、自分の意思で落とした『故意犯』だけです。たとえば、うっかり落としてしまったような過失の場合は、罪に問えません」
では、単なる「うっかり」の場合は、落とした人の責任は問われないのだろうか。
「いいえ。うっかり落としたとしても、通行人のけがなど何らかの結果が発生した場合は、過失傷害罪(刑法209条)が成立する場合があります。告訴されると、30万円以下の罰金または科料が科せられることもあります。また、罪に問われなくても、民事上の不法行為として,損害賠償請求を受けることが考えられます。
通行人からすれば、過失であっても、危険にさらされることには変わりありません。たとえ犯罪にならなくても、高層階に住んでいる人は、注意すべきでしょう」
永芳弁護士はこのように話していた。