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飲み会帰り「雑居ビル」に入って用を足したら鍵かけられた! ドア蹴ったらトラブルに
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飲み会帰り「雑居ビル」に入って用を足したら鍵かけられた! ドア蹴ったらトラブルに

閉じ込められた「トイレのドア」を蹴ったら、修理費用を請求されてしまったーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「納得がいきません」と質問が寄せられました。

投稿者の男性は会社の飲み会帰り、急にトイレに行きたくなって、近くにあった雑居ビルに入ったそうです。しかし、用をたし、手を洗って出ようとしたら、トイレの入り口に鍵が掛かっていて、出られなくなったといいます。

男性は、誰かに気づいてもらおうと、ドアを叩いたり蹴ったりしましたが、外からの反応はなし。携帯から110番して2時間後に、ようやく警察官に見つけてもらったそうです。しかし、蹴ったことで、ドアは大きくへこんでしまいました。男性は管理会社から、ドアの修理費用を請求されてしまいました。

男性は管理会社に謝罪するつもりですが、そもそも閉じ込められなければ、蹴ることもなかったと、修理費の支払いには納得がいかないようです。男性は修理費を支払わないといけないのでしょうか。石塚順平弁護士に聞きました。

●そもそもトイレ利用が「建造物侵入罪」になり得る

ドアを蹴って損壊した行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当しますので、原則として損害賠償責任を負うこととなります。

ただし民法では、例外的に、その行為が「正当防衛」といえるような場合には、損害賠償の責任を負わないとされています。民事上の正当防衛とは、他人の不法行為に対して、自己または第三者の権利を守るため、やむを得ずした行為のことをいいます(民法720条1項)。

この点、本件では、トイレの中に人がいるかを確認せずに鍵をかけた管理会社の行為が、仮に「他人の不法行為」であると言えたとしても、2時間待ったとはいえ、携帯電話で110番通報できたのですから、ドアを損壊した行為が「やむを得ない」ものであったとは言い難いでしょう。

そのため、やはり本件では正当防衛の要件には該当せず、原則どおり損害賠償責任を負わざるを得ないと考えられます。

ただ、管理会社の行為にも一定の落ち度があると認められる場合には、「過失相殺(民法722条)」という考え方があります。過失相殺とは、被害者の過失の程度によって、加害者に対する請求額が減殺されるというものです。これにより修理費用の負担を軽減することが考えられます。

しかし今回の場合、投稿者が雑居ビルのトイレに入ったことは、「建造物侵入罪」に該当し得る行為ですから、投稿者にも落ち度があります。この事情は、過失の割合に影響してくるでしょう。

このように本件では、考慮する要素がたくさんあって複雑です。現実的なところとしては、損害賠償責任は負わざるを得ない前提で、管理会社の行為にも落ち度があることを主張して、減額交渉をしていくことになるでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

石塚 順平
石塚 順平(いしづか じゅんぺい)弁護士 姫路こはる法律事務所
弁護士兵庫県出身。京都大学卒、関西大学法科大学院修了。平成20年弁護士登録。労働事件・家事事件・交通事故事件を中心に取扱っている。兵庫県弁護士会人権擁護委員会副会長。

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