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結婚「標準モデル」はもはや存在しない! アラフィフ婚にみる新たな幸せ【後編】
出典:平成27年人口動態調査「結婚生活に入ったときの年齢別にみた年度別婚姻件数」

結婚「標準モデル」はもはや存在しない! アラフィフ婚にみる新たな幸せ【後編】

50歳前後の結婚「アラフィフ婚」がじわりじわりと増えている。出産適齢期を過ぎてからの結婚は、時に個人を追い詰める「こうあるべき」という結婚観や家族観から自由だ。

「サラリーマン夫に専業主婦の妻、子供ふたり」といった家族のかたちの‶標準モデル〟は、長引く経済低迷と加速する少子高齢化ですでに幻となったのではないだろうか。(ライター・滝川麻衣子)

●20年前に断ったプロポーズ、49歳女性が続ける婚活

「今思えば、あのときカタをつけておけばよかったのかな」

東京都内の出版社に勤める島田佳奈子さん(49)=仮名=は、20年前のある冬のことを思い出す。仕事関係の男性にルミネ新宿の前で「一生、一緒にいたい」と、プロポーズされた。しかし、その頃の島田さんは、とにかく仕事で一人前になろうと必死だった。相手の男性を「恋愛対象に考えたことがなくて、とにかく驚いた」。

当時の会社の状況からして、結婚して出産すれば、編集者として第一線を外れていくことは目に見えていた。「半人前の状態で『安易な方』には流れていきたくない」。どうしても、結婚という気持ちにはなれなかった。

その後、相手の男性は別の女性と結婚して子どもにも恵まれたという。島田さんは今も、独身で仕事を続けている。「いい人がいればいつでも」と、婚活中の身でもある。まとまらなかったが、去年も10歳年上の銀行員とお見合いをした。

ふと20年前のルミネ前がよぎらないでもない。けれどやっぱり仕事を辞める気はない。「経済的に自立した上で、老後を一緒に過ごせる人がいい。別居婚や通い婚でもいいかな」と、思う。パートナー探しは続いている。

●アラフィフ婚活のこだわりは

「アラフィフ世代の婚活は増えています。アラフォー世代は『顔、年収、年齢』をどうしても捨てきれないが(アラフィフは)案外、顔と年齢は関係ないと言う人が多いです」。

結婚相談所「お見合い塾」(大阪市北区)の代表、山田由美子塾長はきっぱりそう言う。

そのうえで「こだわりは生活面なので 安心な生活ができると考えれば 飛び込める人が多い」と指摘する。全国自治体の婚活セミナーに呼ばれる山田塾長は、これまで20万件の婚活にまつわる悩み相談に答え、約2000組が成婚した。

そんな山田塾長がアラフィフ婚活者に言うのは「自分が輝いていける結婚をしなさい」だという。「50になったらもう自分の人生ができあがっている。自分が楽で自由に生きられる相手を選ぶことです」。

結婚相談所「パートナーエージェント」(東京都品川区)のコンシェルジュ、菅聡子さんは、アラフィフ世代の婚活について、男女の意識の差を指摘する。

「じっくりと話を聞いていくと、男性は若い子に越したことはない、との本音も出てきますね。そこをどうしても捨てきれない方もいます」。こうした男性に同年代の女性を紹介しても「自分は周りから若々しいと言われる」と、なかなか譲らないという。

ただ、年収にルックスにと‶スペック〟が高かったとしても、アラフィフ男性を20代、30代女性が望むかは別問題だ。「一方通行の希望条件をあげるだけでは、時間も、お金もかかってしまいます。ご本人の希望はお聞きしますが、現実もお伝えしていきます」(菅さん)。

アラフィフ婚ならではの障害もある。この世代の婚活者に少なくない再婚では、お互いの子どもも関わってくる。親の介護も「いつか」ではなく目前の問題でもある。「若い世代なら『好きだから』で済むことが、お子さんの理解がなかったり、介護に対し相手の不安が募ったりで、ダメになることもあります。ただ、そこを乗り越えたカップルの絆は深い」と、菅さんはいう。

●結婚難の時代

そもそもアラフィフに限らず、日本は結婚難の時代だ。結婚・出産の平均年齢は年々上がり、45~49歳と50~54歳の未婚率の平均を示す「生涯未婚率」は増加の一途が推計されている。一方で18~34歳の独身者のほぼ9割は「いつか結婚したい」(2015年、国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)と答えており、「事実婚」も浸透しているとは言い難い中、「望んで未婚」はやはり少数派だ。

内閣府「結婚・家族形成に関する意識調査」(2014年)によると、今まで結婚していない理由の最多は男女ともに「適当な相手に巡り合わない」。未婚も結婚もその時期も子供を持つも持たないも、選択肢が多様化した現代だからこそ、さまようひとも増え続ける。

●標準モデルの崩壊

「今から出産、子育てする人たちの結婚には何十年もあるけれど、私たちはケンカする時間ももったいない」。前編でも紹介した、結婚3年目の会社員の熊沢ほしみさん(58)はいう。人生80年とすると、2人とも元気に動ける時間は10数年かもしれない、と考えるからだ。

一人暮らしの長い夫は家事全般をこなせるが、料理は熊沢さんの担当だ。一度、作ってくれたチャーハンは真っ茶色だった。「この人はこれを食べてきたのか」と思うと、残りの人生のご飯は自分がつくろうと決めた。

「元気で一緒にいられる時間を思うと、一日一日が大切です」

かつて日本にあった「サラリーマン夫に専業主婦の妻、子供ふたり」といった‶標準モデル〟は、長引く経済低迷と加速する少子高齢化ですでに幻となった。

若い相手を探したり不妊治療をしたりと強く子供を望むひともいれば、出産・育児を前提とする‶結婚適齢期〟の後に訪れた、アラフィフ婚に幸せを見出す人もいる。事実婚や同性婚という選択肢だってある。価値観が急速に多様化する現代に、次の‶標準モデル〟を見出すことはもはや困難にみえる。

ただ、人ぞれぞれの適齢期や結婚や家族のかたちが受け入れられる社会は、未婚者にとっても既婚者にとっても、今よりもう少し生きやすいのかもしれない。

(連載の前編〈ひそかに増える「アラフィフ婚」、社会の「子どもはいいぞ!」呪縛乗り越え【前編】〉はこちら→ https://www.bengo4.com/c_3/n_5923/ )

(弁護士ドットコムニュース)

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