滋賀県警は、仕事や金銭のトラブルなどを口実にして、執拗に面会を強要したり電話したりする行為も「ストーカー」として取り締まりの対象とするため、「県迷惑行為防止条例」の改正を目指しているという。産経新聞が10月下旬に報じた。
現行の「ストーカー規制法」は、「恋愛感情」を前提としたつきまとい行為を規制の対象としているため、恋愛感情と関係のない行為は規制できない。
産経新聞の報道によると、今回の条例改正では、規制の対象を「恋愛感情」の有無にかかわらず「正当な理由に基づかないつきまとい行為」まで広げることで、ストーカー規制法の本来の趣旨である、恋愛感情に基づいたストーカーの取り締まりを強化する狙いもあるのだという。
恋愛感情によらない嫌がらせ行為については、既に30以上の都道府県が条例で規制しており、この流れは今後も広がる可能性がある。「恋愛感情」の有無に関わらず、つきまとい行為を規制することにどんな効果が期待されるのだろうか。また、どのような問題点が考えられるのか。前島申長弁護士に聞いた。
●刑法の構成要件に該当しない限り、処罰が困難だった
「ストーカー規制法では、つきまとい等の目的を『特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的』に限定しています。
ですから、仕事や金銭のトラブルによるつきまとい行為については、刑法の構成要件に該当する場合を除いて、処罰が困難でした。
たとえば、仕事でミスをしたことを理由にデートや食事への同席を強要したような場合は、刑法の強要罪にあたります。
また、金銭の借入があることを理由に『金を返さないのは人間のくずだ』とか『●●は金を返さない』などと周りに吹聴してまわる行為は、侮辱罪や名誉棄損罪の構成要件に該当することになります。
しかし、そこまでいかない単なるつきまとい行為は、せいぜい軽犯罪法の対象とされる程度にしかすぎませんでした」
条例によって、どう変わるのだろうか。
「今回の滋賀県の取り組みは、つきまとい行為等の目的を『正当な理由にもとづかない』ものに広げることで迷惑行為を防止し、ひいては、労働トラブル、金銭トラブルに基づく凶悪事件を未然に防ごうとするもので、基本的には評価すべきだと思われます。
もっとも、『正当な理由』の判断を警察当局の判断に任せることになりますので、どのような行為が、規制の対象となるのか極めて不明確であるという問題が残ると思われます。今後、判例や事例の集積をまって、その規制範囲を明確にしていく必要があるでしょう」
前島弁護士はこのように話していた。