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コンビニ会計前に商品の「アイス」を食べた中国人女性・・・法的に問題ないのか?
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コンビニ会計前に商品の「アイス」を食べた中国人女性・・・法的に問題ないのか?

コンビニで会計をすませる前に、商品のアイスクリームを食べた中国人の女性が、店員から注意された。すると、一緒にいた夫が腹を立てて、妻とともに店員に暴行をくわえ、ケガをさせた――。そんな事件が9月下旬に札幌で起こり、2人は傷害の疑いで、北海道警に現行犯逮捕された。

報道によると、中国人夫婦は9月26日夜、札幌市内のコンビニ店員の顔を殴ったり、髪を引っ張ったりするなどの暴行をくわえて、鼻や頬に軽傷を負わせた疑いがもたれている。妻が会計前に、店内で開封してアイスクリームを食べたところ、店員から外に出るように指示されたため、夫が「侮辱された」と感じて、2人で暴行に及んだという。

まさに「逆ギレ」といっても過言でないかもしれないが、きっかけとなったのは、会計前に商品のアイスクリームを食べたことだ。少なくともマナー違反とはいえるだろうが、法的にも問題がある行為なのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●単なるマナー違反ではなく、明確な法律違反だ

「店に並べられている商品を食べることが許されるようになるのは、客が、物を自由に使用したり処分したりすることができる権利、すなわち『所有権』を取得した時点以降です。

つまり、商品を食べることは、商品に対する所有権を持つ者、すなわち所有者に限って許されます」

すでに商品を買う意思はあったとしても、お金を支払う前は、勝手に食べてはいけないということなのか。

「一般的に、売買契約では、売り主と買い主の合意が成立することによって契約が成立し、所有権が移転します(民法555条)。

したがって、金銭の受け渡しがなくても、『合意だけで売買契約が成立し、所有権が移転する』と解釈することも、一応は可能です」

今回の中国人夫婦のケースについては、どうだろうか。

「今回のケースでは、そもそもレジで会計をすませる前の段階とのことなので、売買合意の成立を認定することは不可能です。

また、たまたま来店した名前も素性もわからない客と店との売買契約については、代金を取りっぱぐれる危険性を考えれば、代金の受け渡しがあって初めて、所有権が移転すると解釈するのが通常です。

法律上も、買い主の代金支払い義務と売り主の目的物引渡し義務は同時に履行する関係と定められています(民法573条)。

したがって、代金を支払う前の商品を食べ始めることは、単なるマナー違反ではなく、明確な法律違反だと考えられます。

刑事的には窃盗罪が成立し、民事的には不法行為による損害賠償の責任が生じると考えられます」

足立弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

足立 敬太
足立 敬太(あだち けいた)弁護士 あい弁護士法人富良野・凛と法律事務所 旭川OFFICE
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に複数の分野を取り扱う。「常に相談者・依頼者様の視点に立ち、分かりやすい説明を心がけています」

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