法制審議会の刑事法部会で審議が進められている「性犯罪厳罰化」について、性犯罪の被害者や支援者らが1月12日、東京・永田町の参議院議員会館で集会を開き、「被害者の声を反映した刑法の見直しをしてほしい」と訴えた。
法制審議会では、「3年以上の有期懲役」とされている強姦罪の刑罰を「5年以上の有期懲役」とすることや、「無期または5年以上の懲役」とされている強姦致死傷罪の下限を「6年以上」とすることなど、性犯罪厳罰化の是非が議論されている。
また、被害者の告訴を不要とする「非親告罪化」や、親などの監護者としての立場を悪用した18歳未満の被害者に対する性行為を処罰する規定の創設、強姦罪の性差をなくし、性交に準じた行為も処罰することなども、審議の対象となっている。
●「加害者への対応も考えてほしい」
集会を主催した「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」共同代表の周藤由美子さんは、「100年以上ほとんど改正されてこなかった刑法の強姦罪について、非親告罪化や、(被害者の)対象を女性だけではなく男性やLGBTの方にも拡大すると考えていることは、大きいことだと思う」と、刑法改正の方向性を評価した。
その上で、抵抗を著しく困難にする暴行・脅迫が必要とされる強姦罪の成立要件をもっと緩和することや、暴行・脅迫がなくても強姦罪が成立する年齢を現行の13歳未満から、少なくとも15歳程度まで引き上げることなどを求めた。
また、幼少期に性被害を受けた人が、だいぶ時間がたってから被害を訴えるケースもあることから、年少者が被害者である場合、少なくとも被害者が成人するまで公訴時効を停止することなどについても要望していた。
一方、1999年にアメリカでレイプ被害を受けたフォトジャーナリストの大藪順子さんは、厳罰化以外の対応の必要性に言及。「刑罰を長くすればするほど加害者が再犯をしないかというと、それはまた別の話。刑法改正の時には必ず、加害者への対応も考えてほしい。加害者のカウンセリングも必要」と述べた。
「女性の活躍を叫ぶ前に、きちんとしたセーフティネットをひくことが先だと思います。何かが起こった時に、助けを求めることができる場所を整えるべきです。自分は1人ではないと分かると、被害者は強くなれる。被害後すぐ、味方に出会うことによって、被害後の人生も自分らしく生きて行くことが可能になります」
●「ポルノ被害を防止する法律の作成を」
この日の集会では、強姦以外のさまざまな「性被害」の実態についても、意見表明がおこなわれた。「ポルノ被害と性暴力を考える会」の金尻カズナさんは、アダルトビデオへの出演強要などのポルノ被害についても、「被害当事者の声を反映した法律の作成・改正をお願いしたい」と述べた。
「私たちのもとには、『明日からコンビニの週刊誌やAV雑誌で私の裸の写真や映像が販売されてしまいます。どうしたらいいですか?助けてください』という内容の相談が、2週間に1回のペースで来る」。2015年は75件の相談が寄せられたが、その7割以上がAV出演に関する相談だったという。
「一度でも契約書に署名してしまうと、撮影から逃れられず、『泣いても撮影は終わらないよ』と脅されて作り笑顔をさせられ、(撮影された動画は)コンビニで大々的に販売されてしまいます。
アイドルになれるよなどと18歳や20歳の若年女性を言葉巧みに利用し、無知や恐怖に乗じてAVに出演させ、事業者が莫大な利益を得ている実態があります。これは性的搾取であり、人身取引であると考えています。
この問題は被害として認知されていませんが、AV出演に関しては、立証するハードルが高く、被害を受けても泣き寝入りを余儀なくされている人が多い。壮絶な人権侵害が行われています」