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親族が借金苦で自殺、債権者に1000円でも渡したら「借金を相続する」は本当? 
画像はイメージです( Luce / PIXTA)

親族が借金苦で自殺、債権者に1000円でも渡したら「借金を相続する」は本当? 

亡くなった人が残した借金。葬式に債権者が現れ、「取り立て屋なので、1000円だけでも払ってもらっていいですか?」と遺族に言ってきたら、支払うべきなのでしょうか。

最近、話題になったあるツイート。投稿主は借金苦で自殺した親族の葬儀に来た債権者が、香典を渡しつつ「1000円だけでも」と発言した場合を例にあげました。もし実際に支払ってしまったら「遺族の支払い意思があるとして借金が遺族に引き継がれる」と警告をしています。

相続者である遺族が取り立て屋に対して、一部でもお金を渡すことは、「支払い意思あり」として借金を引き継ぐことになってしまうのでしょうか。このような場合どう対処するべきなのか。新保英毅弁護士に聞きました。

●話題のツイートには「少し誤解がある」

ーーこのツイートがいうように、一部でも支払ったら借金は遺族にすべて引き継がれてしまうのでしょうか

故人の借金を一部でも支払ってしまうと借金が遺族に引き継がれてしまうというのは、少し誤解があると思います。

相続人である故人の債務(借金)を引き継ぐことになるか、つまり相続放棄できなくなるかどうかは、相続の「単純承認事由」があるかどうかによります。

民法上、相続単純承認事由について、相続財産を処分した場合(民法921条1号)、相続開始を知ってから3か月以内に相続放棄または限定承認の申述をしないとき(同条2号)、相続財産の隠匿や費消等をしたとき(同条3号)と定められています。

相続債務の一部を支払うこと自体は、相続財産の処分ではありませんので、遺族が自分のお金で故人の借金の一部を支払ってしまったとしても、相続放棄の支障にはなりません。

ただし、故人の財産の中から返済すると、相続財産を使ってしまったことになり、相続財産の処分になる可能性がありますので、注意が必要です。

なお、法律上は相続放棄の支障にならなくても、債権者からすると遺族が相続債務を引き継いでくれるとの期待や誤解が生じますので、相続放棄するのであれば、支払わらない方が無難でしょう。

プロフィール

新保 英毅
新保 英毅(しんぼ ひでたか)弁護士 新保法律事務所
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。

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