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働かない「ひきこもりの妹」に募る不安…金銭トラブルに巻き込まれない縁の切り方は?
親がいつまで子どもの生活を支えられるかは深刻な問題です(bino / PIXTA)

働かない「ひきこもりの妹」に募る不安…金銭トラブルに巻き込まれない縁の切り方は?

兄弟、姉妹の縁を切る方法はありませんか——。弁護士ドットコムにはそんな質問が数多く寄せられています。

ある相談者は、中学時代から引きこもり状態で働かない妹と縁を切りたいと思っています。

現在、両親とともに実家で暮らしている妹。両親は妹に働くように何度も話をしていますが、全く実現していません。両親も高齢になってきており、そのうち収入が年金だけになることから、今の生活を長くは続けられないと考えています。

相談者が一番心配しているのは、もし妹が税金や住民税を払えなくなった場合、相談者に請求が来るのではないかということです。「お金で迷惑をかけられない方法を知りたい」と話しています。

果たして、妹の税金滞納や借金などが親族に請求されることはあるのでしょうか。新保英毅弁護士に聞きました。

●解説のポイント 

・(保証人になっていない限り)親族に請求はされない
・自分の生活を犠牲にしてまで妹に対する経済援助を強制される可能性は低い
・相続放棄をすれば妹の借金などを引き継ぐことはない

●借金はどうなる?

そもそも個人の税金滞納や借金は、法律上、その個人が支払う責任を負っています。たとえ親子や兄弟姉妹であっても、保証人にならない限り、責任を負わないのが原則です。   しかし法律上、親子や兄弟姉妹の縁を切るという制度はありません。そのため、親子あるいは兄弟姉妹関係に基づいて、相続と扶養の問題が発生することは避けられません。

まず、相続に関しては、妹が死亡した場合、妹に子どもがいなければ、父母が相続人となります。父母が相続放棄すれば、姉である相談者が相続人となります(民法889条1項)。

相続人は、故人の財産だけでなく借金なども承継します(民法896条本文)。しかし、所定の期間内に家庭裁判所で相続放棄をすれば、借金などを引き継ぐことはありません(民法915条1項、938条、939条)。

●兄弟姉妹を扶養しなければいけない?

次に、親子、兄弟姉妹関係があれば、互いに扶養義務が負います(民法877条1項)。したがって、妹に経済力がなく生活を維持することができない場合、父母や相談者には扶養義務があります。

ただし、この場合の扶養義務は、親が未成年の子に対して負う扶養義務とは異なり、自分に経済的余力のある範囲ですればよく、その程度も最低限の生活を維持する生活扶助義務とされています。

また、扶養の方法や程度について当事者間で協議が出来ない場合、扶養権利者である妹の需要、扶養義務者である父母や相談者の資力、その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が決めることになります(民法879条)。ここで、両親も年金収入だけになることや、妹が働けるのに働けないといった事情が考慮されるでしょう。   なお、妹が就労不能で、親族による扶養も難しい場合、生活保護の申請を検討することになるでしょう。また、借金や税金滞納については、弁護士に相談して自己破産や役所への減免申請により解決するよう促すべきでしょう。

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プロフィール

新保 英毅
新保 英毅(しんぼ ひでたか)弁護士 新保法律事務所
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。

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