新型コロナウイルスの影響で金銭的に追い込まれ、親やきょうだいなどの親族にお金を借りたという人もいる。
しかし、家族間であっても金銭を貸したことでトラブルに発展してしまうケースもある。
実際に「兄を信頼して貸したお金がいつまで経っても返ってこない。そのせいで家計に影響が出ている」「これまでお金を貸して返してくれたことは1度もないのに、また『金貸して』としつこく言ってくる親族がいる。縁を切りたい」などの声が上がっている。
●親族であろうと「借用書の扱いは一緒」
このようなトラブルを防ぐため、借用書を作成しようと考えている人もいる。弁護士ドットコムにも借用書の作成を検討しているという人が相談を寄せている。
相談者の弟は、コロナの影響で親に50万円を借りることになった。弟はこれまでも親から金銭を何度も借りてきたが、返済はうやむやになっているという。
相談者は「効力をもった借用書を作りたい。家族間であっても借用書は有効なのでしょうか」と聞いている。
大村真司弁護士は、次のように説明する。
「親族関係であってもお金の貸し借り(消費貸借契約)が出来ないわけはありません。全くの他人であろうと親族であろうと、借用書の扱いは一緒です。
ただし、消費貸借契約は口頭でも成立しますので、借用書は『証拠』でしかありません。LINEやメールで契約の申込みと承諾が確認できれば、それでも十分です。
ただ、それだと本当に貸し借りの合意があったと言えるか微妙なケースもあります。また、契約の内容が不明確になりやすいので、借用書を作るに越したことはありません。
なお、親族間では『貸す』と言いながらも、内心は半分贈与のつもりというケースも少なくありません。今回のケースでも、お金を貸した親は、返済まで求めていない可能性もあります。ただ、本当に返してもらうつもりであれば、契約書を作っておくことは必要でしょう」
●借用書作成にあたっての注意点は?
借用書を作成する場合、具体的にどのような内容を盛り込むとよいのだろうか。
「作成にあたっては、日時、金額、支払期限、回数、利息や損害金の利率等を記載しておきます。分割払いの場合は、何回か支払を延滞したら一括請求が出来る条項を入れて置いた方がいいでしょう。
また、『勝手に作成された』と言われないよう、お互いが署名・押印(自分の印鑑ではないと言い逃れできないもの)してください。行き違いが生じてはいけないので、同時に同じ借用書を作成し、お互いが1通ずつ持つようにしましょう。
より効力の強いものにしたいなら、公正証書で作成することが考えられます。
公正証書を作成することで、裁判をしなくても強制執行をすることができます。公証人役場に原本が保管されますので紛失の心配もありません。ただし、それなりの費用がかかりますし、親族間でそこまでする必要性があるケースは多くないとは思います」