大阪府摂津市はこのほど、市内在住の男性に対して、本来の金額よりも1502万円も多く、住民税を還付していたと発表した。
市によると、男性の2018年度の住民税に関して、株式の所得にともなう控除分を還付する予定だったが、担当者の事務ミスで、1ケタ多く入力・計算し、男性の口座に振り込んでしまったという。
約1年半経った2019年、大阪府の指摘で発覚した。摂津市は、間違えたことを謝罪したうえで、差額の返還をもとめているが、男性側は「すでに使って返還できない」と応じていないという。
市は、法的措置も含めて、返還してもらう方法を検討している。はたして、本来の金額よりも多かったとはいえ、すでに使っていた場合、返還しなくてもよいのだろうか。田沢剛弁護士に聞いた。
●不当利得者には返還義務がある
「民法は、『法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う』(703条)と定めています。不当利得者の返還義務といいます。
さらに『悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う』としています(民法704条)。
ここでいう『悪意』とは、法律上の原因がないことを知っていることです。また、逆に『善意』とは、法律上の原因がないことを知らないことです。
以上のことから、703条のほうは、善意の受益者、つまり、法律上の原因がないことを知らずに利得した者が返還しないといけない範囲(金額)を『その利益の存する限度』と定めたものということになります」
●誤って振り込まれたと認識していたかどうか
「この返還すべき利益のことを『現存利益』といいます。すでに費消された(使ってしまった)部分は含みません。ただし、形を変えて残っている場合には含みます。
たとえば、遊興費として費消した場合には、残っていないことになりますが、生活費として費消したということであれば、本来の自分の財産は費消されずに残っているため、なお利益として現存することになります。
したがって、今回のケースも、男性が、誤って振り込まれたものであると認識していたかどうか、費消せずに残っているかどうか、費消したとしても形を変えて残っているかどうかによって、結論は変わってくるということになります」
なお、毎日新聞によると、男性は年金で生活しており、返済は困難といい、「市がやることなので間違いないと思っていた」と話しているという。