「弁護士が扱うのは、事件ではなく依頼者の人生」悩みを解消し、前向きに人生を歩めるようサポート
インターンシップでの出会いをきっかけに弁護士を志す
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
大学時代のインターンシップで弁護士の仕事を間近で見て、魅力を感じたことがきっかけです。
インターンシップは2週間。法律事務所で弁護士の先生に付き、裁判を傍聴したり市民集会に参加したりしました。そのときお世話になった弁護士の先生が本当に素晴らしい方で、信念があってやることに筋が通っていて、人間的な魅力に溢れていました。先生を見ていて、弁護士という職業が本当に素晴らしいものだと思いました。なので、弁護士を目指しました。
ーー弁護士を目指してロースクールへ。どんな生活を送られていましたか?
勉強漬けの日々でした。1日12時間、休日は作らず、土日も机に向かっていました。私は3回目の司法試験でようやく合格できました。時間がかかった理由ははっきりしています。1回目の司法試験で落ちた時は自分を否定されたような気がしてただ落ち込むだけで敗因分析や反省が足りていませんでした。そのせいで2回目も落ちてしまいました。それでようやく自分を見つめ直すことができて、3回目でなんとか試験をパスすることができました。
浪人生の頃は「本当に弁護士になれるのか?」と不安で苦しかったですが、自分を分析することがいかに大切か学ぶ機会になりました。苦労というのは、こうやって振り返るとありがたいものですね。問題なのは苦しんでいる最中はそれになかなか気づけないことですが。
労働事件、インターネット関連のトラブル、少年事件の解決に注力
ーー注力している分野を教えてください。
力を入れているのは、労働問題、インターネット関係のトラブルの対応や少年事件です。
労働問題は、所属している事務所が弱い立場の労働者を助けようと力を入れているので多くの案件を担当しています。弱い立場の人達を守るために最低限のルールが法律で定められていますが、それすらも守られていない場合、なんとかしたいという思いで努力しています。人生の大半は働くことですから、それだけ深刻な悩みになりやすいというのも私が力を入れている理由です。
少年事件は、なぜ罪を犯したのか、どうすれば更生できるか、家庭や友人関係を含めて突き詰めて考えることが必要な分野です。弁護士の役割が大きいと思い、力を入れています。
少年は「ごめんなさい」「もう二度としません」とよく言いますが、「なぜ犯罪をしたのか?」と聞くと答えることができない場合がほとんどです。自分自身でもなんでやってしまったのか、分からないんですよね。自分を客観的に見る力が非常に乏しいのです。
結局、自分のことがよく分からずにこのまま犯罪を繰り返してしまうのか、よく反省できたことで二度とやらないようになれるか、弁護士としてまさに少年の人生の岐路に立ち会うことになります。事件を起こした背景を探って、丁寧に対応をすることを心がけています。 とても難しい分野ではありますが、やりがいを感じています。過去に出会った少年たちから卒業や就職の報告を聞くと、うれしくなりますね。
インターネット関係では、SNSや掲示板などでの誹謗中傷、動画投稿サイトへの画像のアップロードなどさまざまなトラブルが起こり、依頼も増えています。社会の変容に併せて弁護士の取り扱う分野も変わる必要があると思い、積極的に取り組んでいます。
ーー誹謗中傷や画像は一度ネット上に拡がると、依頼者は長期にわたって不安を抱えることになると思います。依頼者への対応で心がけていることはありますか。
できるだけ依頼者の方の不安を和らげることです。依頼者の方が不安なのは、先の見通しが立たないことが一つの原因です。今の世の中は、ネットで調べれば大抵のことは分かります。しかし、それはあくまで一般論です。自分にネットが書いてあることが当てはまるとは限りません。実務家としての見通しについて説明させていただくと、安心して下さる依頼者の方もいらっしゃいます。
ネットの海に一度流出してしまった情報を完全に削除することはできないかもしれません。しかし、今わかる範囲では全て削除して、やれるだけのことはやったと、行動をすることで、人は不安が和らぐこともあります。
私が取り扱った事件でも、この世にある全てのデータを削除できたわけではありませんが、できる限りのことをやったというケースで、依頼者の方から「肩の荷が下りました。久々に生きた心地がしました」と言っていただけたことがあります。
完全無欠の解決を図ることにより依頼者の不安をゼロにすることは難しいです。ただ、打てる手は打つことで不安はかなり軽くなるものです。依頼者が納得できる対応を素早くおこない、サポートできればと考えています。
弁護士として依頼者の悩みを解消することがテーマ
ーー仕事をするうえで、心がけていることは何ですか?
弁護士それぞれに、弁護士の仕事に対する哲学があると思います。例えば「裁判で勝つことが弁護士の仕事だ」という先生もいると思います。私の場合、弁護士の究極の目的は「その人の悩みを解消したり、緩和すること」だと思っています。
法律事務所に相談に行くことは、依頼者にとって人生の一大事だと思います。清水の舞台から飛び降りるような心持ちかもしれません。そんな思いを抱えている依頼者に対して、法律家として「法律によると、こうなる」とアドバイスもしますが、他方で“ひとりの人間”として対応することも心がけています。
トラブルは依頼者の人生の一部。弁護士が扱っているのは事件ではなく、依頼者の人生です。人間や社会にはさまざまな側面があり、法律だけで世界が動いているわけではありません。相談に対して法的な説明をしながら、それ以上に対人間として一歩踏み込み、依頼者に寄り添った対応を心がけています。
ーー弁護士として活動されるなかで、印象に残っているエピソードを教えてください。
私が「弁護士の目的は依頼者の悩みを解決すること」だと考えるきっかけになった事件があります。
弁護士になって間もない頃に、配偶者に不倫をされたという方からの依頼を受けたことがありました。その方はお子さんもいらっしゃいましたが、不倫により家庭は崩壊してしまいました。それに対する怒りというのは、言葉で語り尽くせないものかと思います。
私は依頼を受けて、不倫相手への慰謝料請求をおこない、1年半ほど裁判をしましたが、最善を尽くした甲斐もあってか相場よりも高い金額で判決を得ることができました。しかし、この裁判で勝ったからと言っても、家庭が元に戻るわけではありません。弁護士としては、十分な仕事ができたと思う一方で、「これで依頼者の方の人生に貢献できたのだろうか?」という自問自答が私の中に残りました。
そして、事件が終わった後にわざわざ依頼者の方がお礼を言いにお越し下さったのですが、「これで前を向いて人生を歩いていけます」とぽろっとおっしゃったんです。
その時、私は気がつきました。1年半の裁判期間は、依頼者の方にとっては、ただ金銭賠償を求めるというだけのものではなく、受け入れがたい現実を受け止めるためのステップだったのかもしれないと。依頼者の方にとって裁判はひとつの区切りでもあり、その後の人生を前向きに進むための大切な時間なのかもしれません。
弁護士は、裁判で勝つだけではなく、依頼者の苦しみや悩みの解消のために、前向きに人生を歩むというプロセスに向き合う仕事ではないか。そんなことに気づいた出来事として、今でも印象に残っています。
癒しは愛犬。健康のバロメーターでもあるんです
ーー休日はどのように過ごされていますか?
休日は軽くランニングをして気分をリフレッシュしています。色んな本を読んだり、Netflixで映画やドラマを観たりすることもあります。最近ですと、鬼滅の刃も観ています。アニメから入り、漫画も全巻読みました。
ーー趣味を教えてください。
愛犬とたわむれることですね。黒柴を飼っていて、癒されています。愛犬は私の健康のバロメーターでもあります。ふと、「犬になりたい。愛犬よ、そこを代わってくれ」なんて思ったら、働きすぎのサインなので、意識的に心身を休めるようにしています。
ーー今後の展望をお聞かせください。
事務所を大きくしたいとか、そういうのはほとんどないんですよね。とにかく、いつまでも自分の能力を活かして目の前の事件をきっちりやっていくことです。謙虚な気持ちを忘れずに仕事と向き合いたいと思います。
ーー最後に法律トラブルを抱えて困っている方へメッセージをお願いします。
悩みを自分の視点だけで解決することには限界があると思います。私達弁護士は、法律専門家という視点もありますし、日々さまざまな相談を受ける中で培った視点も持っています。悩みの解決に向けて、自分では思いつかなかった視点からのアドバイスができることもあると思います。
相談者の中には、実は根本的には法律とは関係ない部分で深刻に悩まれている方もいらっしゃいます。ひとりで抱えこまず、気軽に相談にいらしてください。解決の道筋を一緒に考えていきましょう。