検察官時代に培った経験や知識を活かし、家事事件から医療過誤、企業法務まで幅広い分野に注力
検察官から弁護士への転職
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
父の影響が大きかったと思います。父もかつて弁護士を目指しており、教師の仕事の傍ら勉強を続けていました。残念ながら司法試験には合格できなかったのですが、父が目指した弁護士を意識するようになりました。
ただ、大学に入ってからは、父の影響はリセットし、改めて自分で何になるか考えなおしました。中央官庁で仕事をすることも検討しましたし、弁護士になることを含め司法試験一辺倒というわけではなかったのですが、改めて法治国である日本では、最終的に法律の解釈運用を決定する法曹の役割が決定的に重要と考え、司法試験を受験することにしました。
ーー司法試験合格後、弁護士ではなく検察官の道を選ばれたのはなぜですか?
司法試験に合格した後、司法修習をする中では、裁判官、検察官の仕事内容にも触れ、弁護士一辺倒の考えはなくなっていました。
司法修習期間の検察修習で、被疑者や参考人などに取調べを行う機会がありました。
その際、反社会的な人物にも臆することなくフランクに話すことができました。案外自分は誰とでも話ができ、取調べが仕事の重要な部分を示す検察官の仕事にあっているのではないか、と自覚しました。
それと、私は、それまで多くの小説等を読んで来て様々な人々の人生に触れていた経験から、人間が好きというか、人間自身に興味があったこともあり、犯罪を通じてではありますが、人間のことをより知ることのできる検察官の仕事により多くの魅力を感じました。
それに、弁護士は依頼者のプライベートな権利を守る仕事ですが、検察官は国家公務員なので、社会全体に奉仕する立場にあります。当時の私にとって、パブリックな利益のために貢献することは、プライベートな権利を守ること以上に意義が深いと感じていたこともあり、また、父も公務員だったことの影響もあったと思いますが、公務員である検察官の道を選択しました。
ーーその後、2018年に検察官を退職されて弁護士登録をされていますね。
検察官を辞めた後に公証人になる人が多いのですが、退職したら弁護士として活動することを、在職中から考えていました。
弁護士にもなる資格をもっているのに、検察官の仕事しか知らないで人生を終わることはしたくないという好奇心な動機もありましたね。
ただ、検察官として事件などを通じて弁護士と接する過程で、弁護士の使命は基本的人権の尊重と社会正義の実現にあるとしながら、その実、金儲けのためには手段を選ばない活動をしているのではないか、という偏見を持つようになっていました。
しかし、実際に弁護士として働き始めてからは考えが一変しました。弁護士会の弁護士倫理に関する規律は厳格であり、その厳格さは検察官や裁判官以上であることが分かりました。
また、民事事件の殆どは財産をめぐる争いですが、権利を侵害されて苦しんでいる方々が多く、目の前でその方々の悩みを聞くと、無視できず、相談者一人一人のために力になってあげたいという気持ちが湧いてくるのです。それは、検察官として仕事をしてきたときの、真実に奉仕する、被害を受けた人のために正義を実現すると考えて愚直に仕事をしてきたことからくる習い性かもしれません。
困っていて相談してくる人、あるいは企業を目の前にすると、自分の中の同情心や義憤が沸き起こり、助けて あげなければという気持ちが沸き起こってきます。
個人や企業の権利は、プライベートな利益ですが、その利益を守るために活動することには、それだけで意味があり、それが弁護士の使命なのだということを、当たり前ですが認識しました。
いまは1人でも多くの人の力になれるように、日々研鑽を積みながら、弁護士の職務をまっとうしています。
ーー現在、注力している分野を教えてください。
民事事件全般に傾注しています。元検察官という経歴から、刑事事件を中心に手がけていると思われることがありますが、弁護士になってから刑事事件を扱う機会はあまり多くありません。 弁護士の仕事を始めた頃は、民事の基本的な知識は持っていても、実務経験が浅いために苦労することもありました。しかし、さまざまな案件を経験する中で知識と事件解決のノウハウを蓄積し、幅広い分野に対応できるようになっています。もともと、司法試験では民事法が得意だったことから、十分に順応できています。 取り扱い分野の中では、労働事件、離婚・男女問題、相続、交通事故の依頼が多いです。刑事事件も少ないですがあります。社労士の資格も取得しているので、労働事件も注力分野です。
また、検察官の経験を活かし、医療問題にも積極的に取り組んでいます。傷害事件や殺人事件などが発生した際、検察官は医師や法医学者から話を聞き、情報を集めます。医療事件では、医療従事者に尋問をおこなうこともあります。そうした経験から得た医学の知識が、医療問題において役立つと考えています。
もちろん、弁護士になっての5年間で扱った医療問題事件の経験もあります。
検察官時代に養われた戦術的知見と洞察力が強み
ーー検察官と弁護士の違いを感じられることはありますか。
一番大きな違いは、証拠収集の手段が限られていることです。検察官のときは、証拠物を捜索差押許可状を得て強制的に押収することが出来ますし、令状を得なくても、捜査関係事項照会をおこなうことで、関係先から情報提供を受けることが普通でした。たとえば、銀行取引の明細書を求める場合も、銀行に照会をかければ協力が得られ、必要な情報を入手することができます。
弁護士にも弁護士会を通じて情報提供を求める制度がありますが、検察官の照会に比べると、照会先の協力度合いが低く、証拠収集に関しては両手両足を縛られて戦を強いられているような気分になることが少なくありません。また、刑事事件と違って民事の裁判官は、当事者の証言だけで信用性を判断できる場合であっても、客観的な証拠がないと事実を認定しない傾向があり、戸惑うことも少なくありません。これは、どうしても改革してゆかねばならないと考えています。
また、検察官のときは、捜査を行う際に警察の協力を得ることができました。しかし、弁護士はほとんどの業務を1人でおこなわなければなりません。多くの作業を単独でこなさなければならないことも、検察官との違いだと思います。
ーーそのような苦労がある中で、仕事をする際にはどのようなことを心がけていますか。
依頼者から相談を受けたら、できるだけ速やかに行動に移すことが大切だと考えています。依頼者の話を聞いた直後に準備書面を用意したり、関係先に照会をかけたりして、迅速な行動を心がけています。
民事事件も基本は、事件の実態が基本ですので、何が実態であるのかは依頼者から詳細に聞いた上で初めて方針が決まるのですが、事実関係を知っているのは依頼者であり、また、証拠の有無等について知っているのも依頼者なので、依頼者から詳細に、また、何度も事実関係等をお聞きすることにしています。
若い人は事実の認定を単純に考えていて、一方向から聞いて得られた説明だけで事実を決めてしまう傾向にありますが、それだと、思わぬ判断ミスをしてしまいますので、そのようなことのないように、着実に事実の把握をして、的確な法的主張ができるように心掛けています。
ーー依頼者とのコミュニケーションで意識されてることはありますか。
依頼者が抱える問題は、単に法的な問題だけでなく、その人の生活や未来に影響を与えるものであることを理解して接することが大切だと思っています。事件処理だけに目を向けるのではなく、依頼者の生活や立場、人生の問題にも配慮することを意識し、目の前の問題にしか目のゆかない傾向のある依頼者に対して、広い視野のなかで事件をどう位置づけるか、という問題にも気付いてもらうようにしています。
もちろん、依頼者の人柄を理解するためにも、私のことを理解していただいて信頼関係を築くためにも、私の経験その他雑談等を行うようにしています。
ーーこれまでさまざまな事件を手がけてこられたと思いますが、自身の強みをどのように捉えていますか。
検察官の経験から生まれた強みとして、戦術的知見と洞察力が挙げられると思います。 検察官は平時の戦術家といわれることもあります。検察官は被疑者、その背後の組織、弁護士、裁判所などさまざまな関係者と対峙して、法廷で戦わなければならないため、戦術意識が養われるからです。この戦術意識は、もちろん民事事件にも適用できるものです。戦術的な観点から事件を分析し、クライアントに対して有益なアドバイスを提供できると自負しています。
私は、60歳を超えて弁護士になりましたが、それまでの検察官という小は軽犯罪法事件から大は強盗殺人その他凶悪犯罪、政治家、公務員の贈収賄事件や脱税等の企業犯罪まで、多種多様の人々、国籍、職業、業種の事件を扱ってきました。この経験から、不正行為や犯罪に関与する者の心理や背景を理解し、真実を見抜く力を養いました。それぞれの犯罪の背景にある部分社会における人間心理の理解と洞察力は、どのような事件を扱う場合においても、きっと役立つものだと思います。
企業案件や医療問題など、幅広い分野に挑戦したい
ーー趣味や休日の過ごし方について教えていただけますか。
趣味は、読書、ドライブ、将棋などです。サウナ-でもあります。将棋はときどきネット将棋を楽しんでおり、テレビで対局を観戦することもあります。読書は、最近は小説よりもノンフィクションや教養書に興味があります。特に語学や経営、実用性のある本や、数学などの学問的な書籍をよく読んでいます。
休日は、読書やドライブ、サウナに入ったりしてリラックスできる時間を楽しむよう心がけています。仕事に没頭しすぎず、適度にリフレッシュの時間も持つことが、いい仕事をする秘訣だと思います。
ーー今後の展望を聞かせて下さい。
民事事件を幅広く手がけることを目指しています。現在は離婚、相続、不動産関連、医療過誤などの案件を中心に取り組んでいますが、今後は企業案件なども含めて、幅広い分野に挑戦したいです。
企業案件では、現在、第三者委員会が流行っていますが、これは企業犯罪を共同捜査で解明する作業と同じです。私は、大分地検の三席検事と東京地検公安部のキャップを務め、共同捜査を指揮してきた経験があり、その後は決裁官として共同捜査を指揮したこともあり、第三者委員会マターについても対応することが可能です。 医療問題に関しては、患者側の代理人として活動することが多いですが、医療機関側の代理人を拒否するものではありません。医療過誤で苦しんでいる患者がいる一方で、真摯に医療に従事する医療関係者が、クレーマー的な患者やその家族から訴えられることもあります。
私は幼い頃に小児結核で長期間入院した経験があり、いまでも医療関係者には感謝の気持ちを抱いています。医療従事者か患者かという立場で選ぶのではなく、困っている人のために私が力になれる事件を受任するというのが私の基本的な考えです。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
上記分野で困っている人の力になりたいと考えています。
検察官時代に公安部に所属していたこともあり、安全保障貿易管理に関連する相談についても対応可能です。
元検察官としての経験や弁護士としての知見を活かして、幅広い問題に対して皆さんの困難を理解し、力になりたいと思っています。どんな相談でもお気軽にご連絡いただければ幸いです。法律の専門家として、皆さんの問題を解決するお手伝いをさせていただきます。