廣部 俊介 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私は法学部だったのですが、もともと弁護士を目指していたわけではありませんでした。学生時代はテニスばかりやっていました(笑)。大学卒業後は公務員になりました。都庁に入りまして、最初の赴任地が三宅島だったのです。人口3000人の過疎地域です。
そのあとは東京で仕事をしたのですが、この仕事は「誰のためにやっているのか」ということがとても分かりにくいのです。そして都庁で働くということは組織で働くということですが、組織だと自分の思ったこと通りのことができません。
例えば、自分が「これは悪いことだ」と思っても組織であるがゆえに謝ることができなかったり、上にいけば管理責任を問われるようになるなど、自分ではどうにもならないことがたくさんあり、組織で働くことの限界を感じました。そこで、自分の信念に基づいて、自分が正しいと思ったことに基づいて仕事がしたいと思い弁護士になろうと思いました。
弁護士になって3年目に長崎県の「対馬のひまわり基金法律事務所」にて約2年間勤務しました。「ひまわり基金法律事務所」は、弁護士のいない地域に弁護士会が作った公設事務所なのですが、対馬は人口3万5000人強の過疎地域です。公務員時代に勤務した三宅島での経験がなければ、弁護士過疎地で仕事をしてみようとは思わなかったでしょうね。
印象に残っている事案(事件)
刑事では、恐喝共犯の事件です。被疑者は恐喝犯の共犯の罪を問われていましたが、被疑者は完全否認していました。私はそれを信じていて、勾留留期間の20日間ほぼ毎日被疑者のもとに通いました。
結果的に不起訴になったのですが、その過程で「被疑者ノート」を見ました。被疑者ノートとは、検察官の被疑者に対する取り調べの記録のことです。それで取り調べの記録の実態をリアルに知って非常に衝撃的でした。それでとても印象に残っています。
民事では、間違いなく勝てると思っていた事件で負けてしまった事件が印象に残っています。結局2審では勝てたのですが、他の弁護士なら勝てたのに自分が担当したから負けたということはあってはならないと考えているので、それで印象に残りました。
仕事の中で嬉しかったこと
依頼人にありがとうございますと満足してもらえるのが一番嬉しいですね。この仕事は、誰のために仕事をしているのかがとてもよく見える仕事ですので、その相手に結果的に感謝されるのが一番です。あとは良い結果が出たときです。裁判で勝って、債権を回収できるようになった時などですね。裁判には勝ったけれど、お金を回収できないという事態もしばしばありますからね。
弁護士になって大変だと感じること
相手に資力が無かったり、相手が雲隠れしてしまったりして、依頼者の法的な権利は認められるけどお金の回収ができなかったりする時があります。そのような時は大変ですね。弁護士の調査が及ばないこともあるのです。
休日の過ごし方
小さい子供がいるので公園に行ったり、一緒に遊んだりと家族で過ごすことが多いですね。
弁護士としての信条・ポリシー
誠実に仕事をすること。これに尽きますね。もう少し具体的に言うと、依頼者に対して丁寧かつ迅速に、適宜状況を報告しながら案件を解決していく、ということです。これは言うのは簡単なのですが、仕事が忙しい中で実際に実行するのは大変なのです。
関心のある分野
今は依頼を受けている案件をひとつひとつ研究しているという状態ですので、特別この分野というのはないですね。ただ、弁護士過疎地域で仕事をしていたので、弁護士があまりいない地域での法律相談のあり方といったことには興味があって、法律相談関連の委員会に所属しています。
今後の弁護士業界の動向
私が一番気にしているのは弁護士人口が増えていって、イソ弁を経験しない人が多くなるということです。イソ弁を経験しないでいきなり独立をしてしまうと、十分な事件処理ができない状態で弁護にあたることになりますが、これは市民のためにならないです。それが気がかりですね。
今後のビジョン
以前勤務していた長崎県の対馬は人口が30000人強と大変少ない地域でした。しかしそこでも依頼は十分あったんです。だから弁護士事務所はもっといろいろな地域にあってもいいと思います。それこそ「ちょっと病院に行こう」程度の気持ちで行けるぐらい身近な存在になるべきだと思います。
なので、私のビジョンとしては、「何か困ったことがあったらここに来よう」というぐらいの、市民に密着した、市民にとって身近な法律事務所にしていきたい、ということですね。
ページを見ている方へのメッセージ
弁護士もたくさん増えてきて、これからいろいろな人が出てくるでしょう。依頼人にとっては相性の良くない弁護士と出会うこともあると思います。そのような時には他の弁護士にもあたってみるというのも一つの方法かと思います。
悩みごとを相談するというのは負担も大きいし難しいとも思うのですが、一カ所で決めないで、何カ所かあたってみて、自分に一番合った弁護士に依頼するということも考えてみてもいいと思います。
(2011年5月インタビュー実施)