「人身事故を起こしてしまった場合、被害者にはどう謝罪を伝えたら良いのか」。そんな質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーには多数寄せられています。
ある人は事故後に、何度も電話による謝罪と自宅訪問による謝罪を重ねていたといいます。その結果、被害者は「処罰は望みません」と警察に伝えてくれると約束してくれたそうです。
人身事故の場合、電話や自宅訪問での謝罪によって誠意を示すことは、刑罰に影響するのでしょうか。また結果として、被害者が「処罰は望みません」と意思を示した場合、そのことも刑罰に影響するのでしょうか。交通事故に詳しい外口孝久弁護士に聞きました。
●誠意は刑罰に影響する?
「人身事故を起こしてしまった場合、被害者に謝罪するのはとても大事なことです。
人身事故を起こすと、自動車運転過失致死傷罪・業務上過失致死傷罪等の処罰の対象となりますから、警察・検察による捜査が行われます。捜査の際には、事故の大きさや、発生した結果(怪我の大きさなど)などと共に、加害者の反省の態度と、それに影響される被害者の処罰感情の程度が大きな意味を持ちます。
警察・検察は、被害者やその遺族に対して『加害者に対してどのような処罰を望むのか』を確認します。この際に、あらかじめ誠意をもった謝罪をしておくことで、『処罰は望まない』などと供述してもらえれば、比較的軽めの処分となる可能性が高まるといえます」
逆に、誠意を示しておかないと、どうなるのか。
「残念ながら、『自分が加入している保険会社が治療費等の対応と示談交渉をやっているのだから自分は関係ないだろう』という態度で、誠意ある謝罪をしない加害者が多いこともまた事実です。
加害者からの謝罪がなく反省の意図が感じられないと、当然のことながら被害者側の処罰感情は峻烈なものになりますから、刑事罰についても比較的重めのものとなる可能性が高まってしまいます。
もっとも、いきなり被害者宅を訪問したりすると、被害感情を余計に逆なでしてしまうことにもなりかねません。一口に謝罪をするといっても、直接会う・手紙を送る・まずは電話で謝罪するなど、様々な方法が考えられますから、まずは自分が加入している保険会社の担当者に謝罪の意思があることを伝え、被害者に対して、どのような方法での謝罪を望むのかについて確認してもらった方がよいでしょう」