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「ヤクザまがいの言葉」で保護者から罵倒された! 教員は「慰謝料」を請求できるか?
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「ヤクザまがいの言葉」で保護者から罵倒された! 教員は「慰謝料」を請求できるか?

「モンスターペアレント」など、生徒の保護者とのコミュニケーションは、教員にとって負担が大きいものだ。保護者から暴言を受けて精神的に参っているという小学校教員から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談が寄せられた。「診断書をとって病気休暇を取ろうと思いますが、法的に相手を訴えることはできるのでしょうか?」というのだ。

相談を寄せた教員は、担任ではないクラスへ応援に行った際、「荒れた学級のサポートの一環で、子どもたちと話をするときに、ICレコーダーで録音をしました」という。「録音する前に『家の人に説明する必要もあるから』と前置きして、子どもたちの見えるところにおきました」と、配慮していたことも明かす。

しかし、録音を知った保護者が憤慨し、「保護者会でヤクザまがいの言葉で罵倒した挙句、『(地元紙の)新聞に通報するぞ』とまで言われました。趣旨を説明しても、親子ともども『人権侵害』と騒ぎ、子どもは校内で暴れるばかりです」。

こうした場合、教員は保護者に対して、法的な措置をとることができるのだろうか。宮島繁成弁護士に聞いた。

●「慰謝料請求」はどんな場合にできるのか?

「法的措置といえば、裁判での慰謝料請求が思い浮かびます。しかし、慰謝料は民法の不法行為(709条・710条)に根拠を置くものですから、違法と評価できる場合、つまり日常生活で受忍できるレベルを超えていることが必要です。

悲しんだりくやしかったり、人間社会で生きる以上いろいろな思いをします。でも、その都度、慰謝料を請求するわけにはいきません」

この教員の場合は、どう判断されるのだろうか?

「話の流れから総合的に判断するので、言葉だけで一概に決めることはできません。ただ、『殺す』『家族を痛い目に遭わせる』『学校に火をつける』などという発言があった場合は、一線を越えているとして、慰謝料を請求できる場合もありうると思います。しかし『地元紙に通報する』という内容だけでは、一般には難しいでしょう。

また、慰謝料は精神的なダメージを補う制度ですから、学校や教育委員会のような『組織』は原則として慰謝料を請求できません。ただ、現実に業務が妨害された場合は、実際に発生した損害に応じて賠償を請求できることがあります」

●やりとりの背景や原因は何か?

さらに宮島弁護士は、教師と保護者の関係について、次のように指摘している。

「保護者と学校との間に緊張関係が生じ、それが激しい言葉になって表現されることがあります。

ただ、こういったやりとりには、何らかの背景なり原因があります。子どものいじめや学力問題、体罰等が背景にあったり、あるいは実際になかったとしても、互いの思い違いがきっかけになっていることがあります。

いずれにせよ、最初から、学校や教師をいじめたり、害を与えようと思って行動する保護者はまずいないと思います。

このため、このような背景や原因を切り離して、表面的な言葉をとりあげて法的な対応しても、かえって問題がこじれるばかりでしょうし、何より一番困るのは子どもだと思います。子どもにとって何が一番望ましいのかというという視点から、協同して取り組んでいくべきでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

宮島 繁成
宮島 繁成(みやじま しげなり)弁護士 ひまわり総合法律事務所
日弁連子どもの権利委員会、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰のほか、スポーツ問題に取り組んでいる。中学校と高校の教員免許を有している。

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