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2018年12月06日 09時51分

「求人情報」が取引してないサイトに勝手に転載された!法的に問題ないの?

「求人情報」が取引してないサイトに勝手に転載された!法的に問題ないの?
画像はイメージです(muu/PIXTA)

まったく取り引きしていない求人サイトに、会社の求人情報が勝手に転載されている――。弁護士ドットコムにこのような相談が寄せられている。

相談者によると、検索条件によって、求人情報をまとめて表示する「便利なサイト」だが、ハローワークに出した求人情報が、無断で転載されて表示されているのを見つけたという。

一般に、求人情報は、会社のコーポレートサイトやほかのサイトに掲載されている。その情報を勝手に転載している求人サイトがあるというのだ。法的に問題ないのだろうか。インターネット問題にくわしい影島広泰弁護士に聞いた。

●「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえれば著作物にあたる

まず、他人が作った文章を勝手に掲載していますので、著作権を侵害していないかどうかが問題となります。引用や私的利用、報道利用などを除いて、他人の著作物を無断で複製することは、原則として著作権侵害にあたります。

著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています。つまり、「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえれば著作物にあたりますし、そういえなければ著作物にはあたりません。

著作権法の教科書で最初に取り上げられるような典型例は、川端康成の小説『雪国』の冒頭「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という表現です。

これは「国境にある長いトンネルを抜けると雪国に出た」という事実を与えられた場合の表現として一般的なものであるため、著作物であるとはいえないとされています。

しかし、単に、短い文書だからといって、すべて著作物性が認められないわけではありません。

たとえば、「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」という交通標語が著作物であるとした裁判例(東京高裁平成13年10月30日判決)や、新聞記事の見出しについて、場合によっては著作物性が認められる余地もないではないとした裁判例もあります(知財高裁平成17年10月6日判決)。

単なる事実をそのまま記述したようなものは著作物にあたりませんが、事実に対する筆者の評価、意見などが表現されていて、何らかの個性が発揮されていれば十分で、「独創性」が発揮されたものであることまでは必要ないのです。

●求人情報でも「表現方法に創意工夫が凝らされて」いれば、著作物にあたる

では、求人情報はどうでしょうか。単なる事実を伝えた短い文であれば、著作物性は認められないと考えられます。たとえば、「シナリオライター 給与月額20万円」という文は、著作物ではないでしょう。

しかし、読者の興味を引くように疑問文を用いたり、文章末尾に余韻を残して文章を終了するなど、表現方法にも創意工夫が凝らされているといえるようなものは、著者の個性が発揮されたものとして、著作物であるといえます。

この点について、実際に争われた事件があります。以下のような転職情報を転載したことが著作権を侵害するかが問題となったのです(この事件では、実際にはもう少し多くの情報が転載されており、以下は抜粋です)。

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【表題】

その案件は、エンジニアにとってスキルの向上につながるか・・・

キャリアアップに役立つ業務知識やノウハウが得られるか・・・

開発環境や条件は希望を満たしているか・・・

ひとつのプロジェクトが完了したとき、関わったエンジニア自身があらゆる面から深い満足を得られるような仕事であること。

それが、○○[社名]が案件を選択するときの基準です。

【仕事内容】

オープン系を中心に、アプリケーション、Web系、制御系に至るまで幅広い分野での開発を手がけている当社で、あなたの希望するプロジェクトに携わっていただきます。

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この事件で、東京地裁は、上記のような転職情報には著作物性があるとして、無許諾で転載した会社に対する損害賠償請求を認めました(東京地裁平成15年10月22日判決)。

結局、転載している求人情報が、単なる事実を伝えるだけのごく短い部分であれば著作権を侵害しませんが、表現方法に工夫がある文を転載していると著作権を侵害することになります。

●著作権侵害でなくても「不法行為」が成立するケースもある

なお、仮に著作権を侵害していないとしても、不法行為が成立するケースも考えられます。

一般的には、著作物ではない文が公表されている場合に、それを利用することは違法ではありませんが、相応の苦労・工夫により作成されたものであって、独立した価値を有しているといえるものを、無断で、営利の目的をもって、反復継続してフリーライドし、競合するサービスを提供しているようなケースでは、不法行為にあたるとされることも考えらます。

先ほど述べた新聞記事の見出しの事件の判決では、新聞社が作成したウェブ記事の見出しをデッドコピーしてリンクを張り、2万サイト程度の登録ユーザのホームページ上に表示させるというビジネスをおこなっている会社が、著作権は侵害していないものの、不法行為ではあるとして、新聞社に対して損害賠償義務を負うとされました。

求人情報も、たとえば、企業のサイトから自分で集めるのではなく、求人情報を募って見やすく掲載することをビジネスとしている職業紹介事業者などのサイトから丸ごとコピーしたりリンクを張るなどして、労せずして競合するサービスを提供するようなことをすれば、不法行為になる可能性があります。

●掲載された側は「削除」を請求できるが、慎重に

掲載された側としては、著作物に該当する文章が転載されているのであれば、まず著作権を侵害しているとして、削除を請求することができます。

なお、その転載が著作権法が定める「引用」として許される場合や、インターネット情報検索サービスを提供するために必要と認められる場合などには、著作権の侵害にはなりません。実際に権利行使する場合には、専門家からアドバイスをもらうべきでしょう。

また、掲載された側が採用情報を提供することをビジネスとしている求人サイトの運営会社などであれば、不法行為責任を追及することも考えられます。

なお、掲載された側の会社と転載した側の会社が提携関係にあるように誤解させるような表示になっている場合には、それ自体が不正競争防止法上の誤認惹起行為にあたるとして、記載をやめるように請求することができます。

また、転載した側の会社のサイトの内容(一番わかりやすい例をいえば、反社会的団体が、自己の団体の関連企業であるなどとして、善良な企業のホームページに無断でリンクを張る場合)によっては、信用毀損にあたるとして、削除を請求することができるケースも考えられます。

(弁護士ドットコムニュース)

2003年弁護士登録。ITシステム・ソフトウェアの開発・運用に関する案件、情報管理や利活用、ネット上の紛争案件等に従事。日本経済新聞の2016年「企業法務・弁護士調査」情報管理部門の「企業が選ぶ弁護士ランキング」2位。
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