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稲村亜美さんに「球児」殺到、謝罪文公表…主催者や中学生の法的責任は?
Youtubeより

稲村亜美さんに「球児」殺到、謝罪文公表…主催者や中学生の法的責任は?

タレントの稲村亜美さん(22)が3月10日、神宮球場(東京都新宿区)で行われた野球大会の始球式に登場、中学生球児らが殺到した騒動。主催者である日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟は弁護士ドットコムニュース編集部の取材に対し謝罪を述べ、3月12日には公式サイトで正式に「開幕式の騒動に関するおわび」を掲載、チームを通じて選手への猛省を促すとして改めて謝罪した。

同連盟によると、正確な人数はわからないが、大会に参加した202チームで、およそ4000人ほどの中学生球児が現場にいた可能性があるという。幸い、稲村さんに怪我などはなかったそうだが、騒動の最中に軽傷を負った生徒も出ており、現場はかなり緊迫していたと思われる。

稲村さんは当日夜、インスタグラムで「みなさんのパワーが伝わってきてわたし自身は貴重な経験をさせてもらえました」と配慮したコメントをしている。一方、ツイッターでは、球児本人と見られるアカウントが「武勇伝」のように語っている投稿が拡散された。

SNSでは、「どう考えても集団暴行事件」「紛れもなく痴漢」という批判が集中、大人の管理責任や中学生球児たちの行動を問う声も上がっている。この問題をどう考えればいいのか。西口竜司弁護士に聞いた。

●中学生たちの行動をどう考えるか

「これは酷い事件です。見ていて『あり得ない』と思いました。彼女はいつも神対応ですね。では、この騒動を法律的観点から解説いたします」

中学生たちの行動をどう考えればいいのか。

「まず、前提として、14歳未満は『刑事未成年』として、刑法上の犯罪にはならないことをお伝えしたうえで、検討していきます。中学生の場合は14歳未満の場合と14歳以上の場合が考えられるので、年齢によって、違いが出てきます。

もし、稲村さんを触るなどの行為をしていれば、刑事上の責任として、公共の場所での痴漢行為を禁止している東京都迷惑防止条例第5条1項に抵触する可能性が考えられます。

万が一、集団で取り囲み、『暴行または脅迫を用いて』いると考えられる場合は、刑法176条『強制わいせつ罪』に該当する可能性もあります。

今回のケースが、実際に刑事事件化する可能性はかなり低いと考えられますが、同じようなことをしないよう、注意した方がいいでしょう」

●安全対策が不十分だった主催者に問題がある

今回の事態を招いたということで、管理者の責任が問われる可能性はないのか。

「今回の騒動については、主催者に問題があると言っていいでしょう。刑事責任は難しいところですが、安全対策をとっていなかったという点には問題があります。

稲村さんにケガはなかったようですが、軽傷を負った中学生もいるようです。あくまで可能性の話にすぎませんが、不法行為責任が成立し、損害賠償請求をされる可能性もありますね」

他にはどのような問題がありうるのか。

「各野球組織の規則で暴行等の行為があれば、チームが出場停止になる可能性もありますね。

いずれにせよこのような行為は許されません。主催者や指導者などの大人にはしっかりしてもらいたいですね。私からは『大喝』を出させていただきます」

●「開幕式の騒動に関するおわび」全文

「去る 3月10 日の開幕式で稲村亜美さんを迎えて行った始球式の投球終了後、選手が稲村亜美さんを取り囲むという出来事がおきました。選手数名が怪我をするという事態にもなり、我々役員の事前検討が充分でなく関係する皆様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

お忙しいところ折角来ていただいた、本連盟の卒団生である稲村亜美さんや所属事務所の皆様に多大なご迷惑をおかけし、心よりお詫びを申し上げる次第です。

選手が整列していた場所を離れ、あのように稲村亜美さん目指して殺到した行為は、決してあってはならないことだと考えています。今回の行為についてその場にいた選手には、チームを通じて猛省を促すとともに、今後このようなことが起きないよう役員一同指導者、選手の教育を続けてまいります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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