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【全文】武藤貴也議員「15分の弁明」週刊誌の記事に書かれていない「真実」とは?
説明する武藤貴也議員

【全文】武藤貴也議員「15分の弁明」週刊誌の記事に書かれていない「真実」とは?

週刊誌に金銭トラブルを報じられたことがきっかけとなって自民党を離党した武藤貴也衆議院議員(滋賀4区)が8月26日、東京・永田町で記者会見を開いた。武藤議員は報道の一部が事実と異なると釈明し、議員を辞職するつもりがないことを表明した。

「週刊文春」の記事によると、武藤議員は昨年10月、学生時代からの知人に、ソフトウェア会社の新規公開株を「国会議員枠で買える」と持ちかけ、23人から4104万円を集めて、自身の政策秘書の口座に振り込ませたが、株は実際には購入されず、出資金の一部が戻っていないと、報じられた。

これに対して、武藤議員は会見で「国会議員枠で買える」という言い方はしていないと否定するとともに、資金を集めたのは学生時代の後輩であり、自分や秘書が集金したわけではないと、週刊文春の報道を否定した。

記者会見の冒頭の約15分間、武藤議員は事前に用意した文書を読み上げて、今回の問題の経緯を説明した。以下に、その冒頭発言の全文を掲載する。

●「記事に書かれていない真実」を公開しようと思っていた

8月19日発売の週刊誌に、新規公開株に関する記事が掲載されました。本件をめぐる事実関係については後述いたしますが、まず今回の件につき、これまで私を支援していただいてきました地元の滋賀のみなさま、また、今回ご迷惑やご心配をおかけしました全てのみなさまに、心からおわびを申し上げたいと思います。

関係各位より、本件につきまして、自分自身の言葉でより詳しい事実関係を説明すべきではないか、というお声を多数ちょうだいいたしました。

私としても、この記事が出た瞬間に、記事には書かれていない真実を公開しようと思っていました。しかし、自民党に籍を置く政治家として、また、いま安保法の参院審議中という微妙な時期において、私個人の判断でそのようなことをすることはできませんでした。党と協議のうえ、世間をお騒がせし、また、法案審議に余計な負担をかけたことに対するけじめとして、正式に離党手続が済みましたので、あらためて一個人として、本件についてご説明させていただきたいと思います。

●「週刊文春」の情報源とされる「後輩のA氏」に約1億円を預けた

まず、今回の件について、少しさかのぼって経緯を詳しく申し上げます。この問題は、先日発売された「週刊文春」の情報源とされる私の後輩A氏が、私や私の知人から預かったお金を全て失ってしまったところから始まりました。

彼は以前から、事業資金を各方面から集めており、私個人にも実際、A氏の申し出があり、平成24年(2012年)の12月から私個人の資金を、最初は500万円から始まり、数年間の累積で非常に大きな額ではありますが、4000万円も預けるに至りました。これは、私がいままで選挙や政治活動のためにと思い、個人で貯めていた全ての資金でございます。しかし、実際、私がA氏に預けた資金は、これだけではありませんでした。

知人から預けられた3000万円。さらに、彼に懇願され、私が私の親から預かった3000万円。数年での累積ですが、それらは合計で約1億にも上りました。

私がなぜこのような非常に大きなお金をA氏に託したのか、当然、疑問に思われる方も多くおられると思います。実はA氏と私は、学生時代から約10年の付き合いがありました。いつも食事をしたり、お互いの家に泊まったりして、政治家になる夢を語り合った同志だったといっても過言ではありません。若い頃から築き上げてきた信頼関係ですので、当然、お金とは無縁の、本当に心を許せる後輩であり、友人であると思っていました。

●有名ブランドの売買で利ザヤを稼ぐ「リスクゼロ」のビジネスと説明された

ところが、私が当選をしたのち、A氏の心の中で、何かが変わってしまったのかもしれません。A氏が突然、私のために資金を作りたい、武藤さんを自分の生命保険の受取人にしてもよいので、信頼して事業資金を預けてほしいとまで言ってきました。私は当時、A氏のことを完全に信頼しきっていましたので、当然政治資金も必要だという思いもあり、しっかりとした調査もせずに、A氏の要求する金額を預けていきました。

もちろん、今となっては、若い頃の友人関係の延長でA氏を信頼しきっていた私の人間的甘さが間違っていたと、心から反省をしております。ちなみに、A氏の言う事業の内容は、有名ブランド品の売買でした。A氏いわく、世界でも高値で取引されているブランドを中心に、売り先と買い先が決まっているもののみを転売して利ザヤを稼ぐビジネスに、資金を使う。ブランド品だけに、値崩れの心配はなく、リスクはゼロとの説明でした。

●「穴が開いた」と言われ、何度となく資金を工面した

しかし、平成24年(2012年)の暮れから資金を渡してほどなく、天候の影響で商品の売買が遅れ、そのため穴が開いたから、それを埋めるための更なる資金が必要だ。あるいは、銀行口座がロックされてしまったため、その代わりとなる資金が必要だ、などといって、さらなる資金を工面してほしいと言ってきました。

私は、もともと預けた事業資金もなくなると言われ、それは困ると思い、各方面、自分の責任の持てる範囲で、何度となく資金を工面しました。

最後に資金を渡したのは、平成26年(2014年)10月初旬でした。私に「これで最後です。これで全てうまくいくようになるので、なんとか信用して、お金を工面してほしい」と言ってきました。

私は何度も「本当に大丈夫か」と確認し、これで全てがうまくいくならと思い、本当に最後だと言って、仕方なく苦労してお金をつくり、1000万円を預けました。

●事業が失敗し「お金を返せなくなった」と言われた

しかし、後から他の被害者の方々からもお聞きして分かったことですが、最初からA氏の事業の実態はほとんどなく、私が最後に渡した1000万円でさえ、事業に1円も使うことなく、ビジネスパートナーと呼ばれる女性に横流しされ、他の方の配当か返済に全て回してしまったようであります。

これは後に、A氏本人から聞きました。これらの資金は事業に使うと言って集められ、その事業に使われていなかったのです。

それから、これも後に分かったことでございますが、A氏は私だけでなく、私の秘書にも、この事業の話を持ちかけていました。私が信頼しきっていたことが、秘書も、A氏を信頼した理由だと思いますが、秘書もA氏に、知人のものと合わせて、こちらも非常に大きな額ですが、約4000万円もの資金を預けてしまっていたと聞いています。

結局、A氏は最終的に事業に失敗し、お金は返せなくなったと言ってきました。私や私の知人、秘書などから預かったお金を全て失ってしまったというのです。これには、本当に困り果てました。

●秘書が知人のB氏から「値上がりしそうな株」の話を聞いてきた

そんな状況の中で、非常に困っていた昨年の10月下旬、私の秘書が、知人のB氏から「値上がりしそうな株があるので、資金をなくしてしまったのなら、この株を購入して穴埋めしてはどうか。枠は抑えてある」という話を聞いてきました。一般公募入札で得意顧客のために抑えられている特別な枠があるとの説明でした。私は株の取引をしたことがなかったので、再度秘書を通じて、知人B氏に確認いたしましたが、「B氏はその株は必ず購入できると言った」との報告を受けました。

そこで、私も信頼している秘書が間に入っていたこともあり、その話を真に受けてしまい、私が預けたお金を失ってしまったA氏に「この株を購入して、私の預けたお金の返済に回してはどうか。必ず買えるみたいなので」という提案をいたしました。このとき私は、まだなんとか、A氏に金銭問題を解決してほしいと考えていたのです。A氏にはとっくに裏切られていたにもかかわらず、どこまでお人好しなのだと批判されても仕方がないと思っています。

お金に困窮していたA氏は、私の話を受け、前向きに検討し始めました。株式購入について、取得した株の売却時期や、利益が出た場合に支払うべき税金等を何度か問い合わせてきました。しかし、私は株の取引について、詳しいことは分からなかったので、直接話を持ってきた秘書と話すように伝えました。

●A氏が「国会議員の話なので信用した」というのは事実と異なる

ちなみにA氏は、この話を持ってきた秘書の知人B氏からも資金を預かっていたようで、A氏から「誰の紹介ですか」と、私が聞かれた際、「B氏からの話です」と告げたところ、「なんだBさんですか、良い話を持ってきますね」と言ったことを記憶しています。

週刊誌の記事によれば、A氏は「国会議員からの話だから信用した」と話をしていますが、実際、この話はB氏からのものだということをA氏は知っていたので、「国会議員からの話なので信用した」というのは、事実と異なると思います。

そしてその後、検討の結果、A氏は株式購入のための資金を準備するということでした。週刊誌の記事では、私が指示して集金させたかのように書かれていましたが、事実は、A氏自身の判断で株式購入をするために自身で資金を準備したことが、おわかりいただけると思います。

●「国会議員が枠を抑えている、という表現を使っては困る」という意味だった

また、この際のやり取りの中で、 私は、A氏が私の名前を使い、「国会議員のために枠を抑えている」という話をしながら資金作りをするといけないと思ったので、そのようなことが絶対にないよう、くれぐれも注意してくださいと付言しました。

当然ですが、公募の様式であり、知人B氏が特別に枠を抑えているだけで、国会議員のために抑えている枠ではないからです。

ちなみにA氏は、B氏からも資金を預かっていましたので、直接お互いを知っており、株の枠については、私ではなくB氏が抑えているという認識があったと思われます。

今回の報道において、私が一度も使用していない「国会議員枠」という言葉が一人歩きしておりますが、おそらくこの時のA氏とのやり取りを切り取りしたものと思われます。

再度申し上げますが、私は、あくまで事実と異なりますので、「国会議員が枠を抑えているなどという表現を使っては困る」という意味で、A氏に伝えておりました。

この部分の表現につきまして、説明が必要という方がおられます。これは、もともと個人的なやり取りであったので、誤字脱字も含めて、確かに不正確、乱雑なところがあったかもしれません。その点も、反省をしなければならないと思っています。

●「確かに購入できる」と言われた株が、購入できなかった

その後、株購入の手続は私の秘書と知人が行っていたので、細かくは把握しておりませんが、A氏は新たな資金を預かったり、借り受けたりして、資金を作ったようです。

そして、秘書の口座を利用したという点が、たくさんの方にご指摘がなされていますが、A氏からは、自分の口座が裁判所から仮差押えをされていること、また、A氏自身がブラックリストに載っているため、証券口座が作れないなどという話がありましたので、秘書の口座を利用するということになったと聞いております。

このとき、秘書の口座に資金を振り込んだ方々については、A氏の指示で振り込んだ方々であり、私は、また私の秘書も、その金額あるいは振り込んだ方々のお名前や人数は、全く存じ上げませんでした。そしてその後、平成26年(2014年)11月、秘書の口座にある資金で、株式の一般公募に応募したのですが、B氏から「確かに購入できる」と言われていた株が、結局購入できませんでした。

その理由については、秘書を通じて、何度もB氏に問い合わせましたが、合理的な説明はありませんでした。

その後、秘書の口座に入金された資金を、元の方々に戻すように指示をいたしました。

なお、報道で、秘書が口座に入金されたお金を、自分の債権者の返済に回したとの記事がありましたが、現在全ての人に返金が済んだとの報告を受けています。ここまでが、本件に関する経緯の詳細でございます。

●A氏に民事訴訟を提起し、刑事告訴も準備している

次に、今後について、お話いたします。

A氏とそのビジネスパートナーの女性に対して、本年2月くらいから、すでに民事訴訟を提訴していましたが、それに加えて刑事告訴についても、現在準備を進めております。本件に関連した一連の事件に法の裁きが必要だと考え、私自身も何も隠すことなく法廷で全てを明らかにしたいと思います。

●個人的なことが政争の具になるのを見ていられず、離党を決断した

最後に、私が離党という決断をしたことについてご説明申し上げます。

7月30日、私がツイッターでコメントを出して以来、私の言動がたびたび国会で取り上げられるようになり、しまいには初当選前にブログで書いた日本国憲法に関する記事まで用いて、政府が野党に追及されるという事態にまで発展いたしました。平和安全法制が国会で審議されている重要な局面で、私の個人的、プライベートなことが政争の具になるのを見ていられず、これ以上、党に迷惑がかけられないと判断し、離党を決断させていただきました。

これまで私を支援していただいた地元・滋賀4区、滋賀県のみなさま、また、これまでご迷惑、ご心配をおかけいたしました全てのみなさまに、あらためて心からお詫びを申し上げるとともに、長く付き合ってきた後輩とはいえ、完全に信用してしまった私自身の人間的甘さを心から反省し、失った信頼を取り戻すため、今後も努力してまいりたいと考えております。

若輩者の私ではございますが、みなさまにおかれましては、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、心からお願いを申し上げます。

(弁護士ドットコムニュース)

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