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学生を苦しめる「ブラックアルバイト」とは? 弁護士が教える4つの典型パターン
学業と並行してアルバイトに励む学生は少なくない

学生を苦しめる「ブラックアルバイト」とは? 弁護士が教える4つの典型パターン

この春、大学に進学した人の中には、新生活とともに、アルバイトデビューを始めようとしている人がいるかもしれない。バイトを始める理由はそれぞれだが、長引く不況のために親からの仕送りが少なく、生活するために長時間のバイトを余儀なくされる学生も増えているようだ。

そんななか、「ブラック企業」のアルバイト版、つまり劣悪な労働条件でバイトを働かせる「ブラックアルバイト」の存在が問題視されているという。そうした現場では、約束とは違う過密なシフトを入れられたり、サービス残業を強いられたり、はては売れ残り商品を買い取らされるケースまであるようだ。

初めてのアルバイトで、そんな目に遭ったらたまらない。これは「ブラックアルバイト」だと早めに気づくためには、どんな点に気をつければいいのだろうか。また、万一バイト先がこうした「ブラックな職場」だったら、どう対応すれば良いのだろうか。労働問題にくわしい井上幸夫弁護士に聞いた。

●「ブラックアルバイト」の4類型とは?

典型的なブラックバイトを見抜くためのチェックポイントとして、井上弁護士があげるのは、次の4点だ。

(1)労働時間に見合った給与を支払わない

「仕事前の朝礼・掃除や仕事後の後片付けなども、労働時間に含まれます。給与はすべての労働時間について、支払わなければなりません。残業代不払いは、労働基準法37条違反になります」

(2)仕事のミスに罰金(賃金カット)を課す

「店の物を壊したなど、仕事上のミスに違約金を課すのは、労働基準法16条違反になります」

(3)上司が怒鳴ったり暴力をふるう

「大声で怒鳴ったり、脅かしたりする行為はパワハラで、『民法上の不法行為』になります。暴力も論外で、殴ったりするのは暴行罪(刑法208条)という立派な『犯罪』です」

(4)長時間働かせる

「最初の契約に反して、授業や試験に支障が出るような働かせ方やシフトを命じることは、契約違反となります。また、心身の健康を害するような異常な長時間労働は労働基準法違反になり、そのような指示に従う義務はありません」

(1)~(4)のどれかに該当すれば、それは「ブラックバイト」だと考えて良いという。運悪く、こうしたバイトに当たってしまったら、どうすればいいのだろうか。

「方法は、いくつもあります。

残業代不払いや罰金などの労働基準法違反は、これを取り締まる労働基準監督署に申告すれば、アルバイト先に指導が入ります。最初は相談という形で、労基署にアプローチしてみるのもいいでしょう。

また、1人でも入れるユニオン(労働組合)に加入すれば、ユニオンとして職場の労働条件改善を申し入れることができます。最近は首都圏学生ユニオンというのもありますね。

どういった方法がいいか、親や友人に相談して、アドバイスやサポートを受けるのもいいでしょう」

●契約違反があったときは、すぐに辞めてよい

「それから、『ブラックアルバイト』はすぐに辞めることができます。

たとえ契約期間の途中でも、説明された労働条件が実際と違う場合には、バイト側から即時に契約解除(辞職)ができます(労働基準法15条2項)。

また、会社に労働基準法違反があったときも、同じくバイト側から直ちにやむを得ない事由による契約解除(辞職)ができます(民法628条)。

自らが契約違反や労基法違反をしているにもかかわらず、辞めるなら違約金を払えなどと言って辞めさせてくれないアルバイト先は、『ブラックアルバイト』そのものです。そんな相手には『今日で辞めます』の一言でいいでしょう」

バイト先をそんな形で辞めれば、働いた分の給与を支払ってもらえるかも心配だが・・・。井上弁護士は「辞めてから労働基準監督署に行って、残業代を支払わせることもできますよ」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

井上 幸夫
井上 幸夫(いのうえ ゆきお)弁護士 東京法律事務所
日本労働弁護団副会長・東京支部長、日本弁護士連合会財務委員会副委員長、東京大学法科大学院客員教授

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