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大阪・日本橋「海賊版AVのメッカ」堂々と販売、店の奥には「生産工場」
海賊版ショップが入居する雑居ビル

大阪・日本橋「海賊版AVのメッカ」堂々と販売、店の奥には「生産工場」

出演強要問題に端を発し、注目される機会が多くなったアダルトビデオ(AV)業界。今、この業界を悩ませている存在がある。違法に商品をコピーし、不当に利益を得る「海賊版」と呼ばれる存在だ。言葉自体は聞いたことはあるが、一体どのようなものなのか。日本で最も海賊版の流通が盛んな街で、知られざる実態を取材した。(取材:岡本洋二)

●「西のオタク街」が海賊版DVDのメッカ

大阪・日本橋。東京の秋葉原と並ぶオタク文化の花咲く街だ。メイド服を着た女性がチラシを配り、大型ゲームセンターが賑やかな音楽を響かせる。そのすぐ側に文字をプリントしただけの看板が立っていた。

「DVD」「営業中」とシンプルな文字が踊る。それも1個や2個ではない。狭くはない日本橋エリアに同じような看板がいくつも存在している。目を引くため、派手なカラーリングのものもあった。チープで不格好、一見すると何だかよく分からないこの看板こそ、海賊版DVDショップの目印なのである。

この日本橋エリア、実は日本で唯一と言っていいほど違法DVDの販売が盛んな場所なのだ。現在、20店舗近くが警察の目をかいくぐって営業を続けている。アダルト作品の著作権を守る業界団体「IPPA(知的財産振興協会)」の担当者は苦々しげに語る。

「摘発が進み、違法コピー品を堂々と販売している実店舗は、全国的に見てもまれ。なのに、日本橋だけが異例の無法地帯になっている。最盛期には約100店舗が乱立していました」

売られているのは、「違法コピー」か「無修正」のDVD。どちらか一方の専門店となっており、両方の商品を扱うところはほぼない。訪れるユーザーの間では、コピーは「A版」、無修正は「B版」と呼ばれているそうだ。

●店舗に潜入「休日は雑居ビルの1室が人であふれかえる」

繁華街沿いの雑居ビルで営業している、とある店舗に足を踏み入れた。15坪ほどの店内には、パッケージがつまった棚が所狭しと並んでいる。その表面に書かれている番号を専用の用紙に記入し、店員に渡すと現金と引き換えに商品が出てくる仕組みだ。ほとんどの海賊版ショップが概ね同様のシステムを取っている。

商品は、布ケースにDVDディスクとジャケットを封入したシンプルなもの。店舗によってはDVDの表面にジャケットを印刷しているものもある。いずれにしても、一目で正規品とはまったく違うことがわかるチープなものだ。

プリントされたジャケット画像をカタログのように一覧にしたものもあり、閲覧用の長机と椅子まで完備されている。一昔前には気になる商品を視聴できるサービスを行っていた店もあるという。

取り扱われている商品は、ほとんどが発売されたばかりの新作だ。話題の有名芸能人の出演作は、発売当日には並んでいるという。1枚あたり300〜500円で取引されており、購入枚数に応じた割引もある。正規品の定価が3000〜4000円ほどだから信じられない価格だ。休日になると、この雑居ビルの一室が人であふれかえることも珍しくない。

商品の「生産工場」は店の奥にあった。パソコンと専用の機械を使って驚くほど簡単に海賊版DVDが量産されている。作り方は「複製機」と呼ばれる専用の機械にコピーしたいDVDとブランク(空)ディスクを入れて処理を待つだけ。数分で複製が完了する。月の売り上げは数百万円にもなるという。簡単な作業で莫大な利益が得られるために、多くの店が営業を続けているというわけだ。

店から出てすぐの大通りに「海賊DVDは犯罪行為」である旨を記した看板が設置されていた。警告を発する近くでなんとも図々しい話だ。

●ユーザーのモラルも問われる

ここ日本橋には、大小さまざまなアダルトショップも営業している。正規品を取り扱う店のスタッフは、「売り上げに関しては、間違いなく海賊版の影響が出ている」と話す。「店のすぐ近くにああいった場所があると、努力してくれている従業員に対してせつない」

正規品の10分の1ほどの値段で買える海賊版は、店舗経営の大きな障害となっている。また、「すぐ近くに警察があるのに海賊版の店が堂々と営業していることに呆れます。一目瞭然なのにどうにかできないものなのか。もどかしいです」。こうも話していた。

実際のところ摘発は行われている。その結果、一時的に落ち着きはするのだが、罰則が軽いため、一度逮捕された人物がまた開店するというイタチごっこが続いているのである。海賊版DVDの販売は、著作権法違反やわいせつ電磁的記録頒布などに問われ得る。しかし、実際には軽い罰金刑だけで済んだり、執行猶予がついたりすることが多く、十分な抑止力になっているとは言い難い。

AV業界団体IPPAの担当者は「海賊版の原材料となるコピーデータすら、違法店舗から購入されている」と怒りを隠さない。年に数回、警察とも協力して、店舗に対する警告を行なっているが、「店舗の外に見張りを立たせていたり、違法店舗同士のネットワークがあったりして、営業中の店に踏み込むことが難しい」という。

怒りの矛先は、海賊版に手を出す「消費者」にも向かう。確かに個人で鑑賞する目的であれば、無修正を含む海賊版の購入自体は違法ではない。しかし、担当者は言う。「違法物と知りながら、安易に手にするお客が多い。制作メーカーの死活問題となり、業界が衰退することが想像されていないのです」(了)

(弁護士ドットコムニュース)

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