ワンセグ機能が付いた携帯電話の持ち主らが、NHKと受信契約を結ぶ義務はないと主張していた訴訟。最高裁は3月12日付で、持ち主らの上告を受理しない決定を出し、「ワンセグでも契約は必要」とする各高裁判決が確定した。
決定を受け、一審のさいたま地裁では勝訴していた、埼玉県朝霞市議の大橋昌信さんは「残念な結果でした」と話した。
一審判決は「受信設備を設置した者」に契約義務が発生するという放送法64条1項の文言について、「設置」と「携帯」を区別したが、東京高裁で「設置」には「携帯」も含むという逆転判決となった。
大橋さんは、この裁判の証拠として、複数の自治体が職員の業務用携帯について、ワンセグの受信料を払っていないという資料を提出している。
「今後はこうした自治体からも、(2017年12月の最高裁判決通り)設置したときにさかのぼって、受信料を徴収しないとならないですね。結構な金額になるでしょう」と皮肉交じりに語った。
●ワンセグなしで「高齢者用のガラケー」を使う
一審水戸地裁の原告で、茨城県高萩市に住む50代の自営業男性は、「ワンセグ機能がついていない携帯電話はほとんどない。機種選択の余地がないのが実情です」と不便さを訴えた。
「ある日、部屋にNHK委託会社の人が訪ねてきました。家にテレビはないと告げると、私の首に下げたガラケーを指して、ワンセグがついているでしょうと言われました。その時、初めてワンセグのことを知りました」(男性)
男性はすぐに機種を変更したが、ワンセグがないガラケーは高齢者向けの機種しかなかったという。しかも機種変更後、解約を申し入れたのに、NHK担当者の対応がなかった。国民生活センターを介することでようやく解約できたが、1カ月分の受信料を払ったという。
「恥ずかしながら経済状況も苦しく、テレビを持たないという選択をしていました。ネットにさえつながれば、情報は集められますし。にも関わらずこのようなことをされ、腹の虫が収まらず訴訟に至った次第です」
放送法64条1項には「放送の受信を目的としない」ときは、契約の例外になることが書かれている。男性は視聴目的で所持しているわけではないなどと主張したが、例外はテレビの販売などに限られるとして退けられた。
男性は今も、高齢者向けのガラケーを使っている。
同種のワンセグ裁判は、5つの地裁(さいたま・水戸・千葉地裁松戸支部・大阪・東京)で提起され、うち大阪の事件は地裁で確定。残る4件が今回の最高裁の決定で確定した。さいたま地裁をのぞき、いずれも契約義務があると判断された。