飲食店の「大食いチャレンジメニュー」(大食いチャレンジ)に挑戦したことがある人も少なくないかもしれない。制限時間内に、ステーキやラーメン、カレーなど、その店の大食いメニューを食べ切ることができれば、代金が無料になったり、数万円の賞金が出たりするというものだ。
ただし、チャレンジに失敗した場合、その代金を全額支払う必要がある。さらに、店によっては、上乗せされた「罰金」を請求するところもある。インターネット上で確認したところ、「罰金額」はまちまちで、数千円から1万円近くになるところもあるようだ。
こうした大食いメニューの「罰金」は、無謀な挑戦者に対するハードルという役割もあるのかもしれないが、どれくらいが適切なのだろうか。たとえば、1万円の「罰金」は法的に問題ないのだろうか。大食いチャレンジの法的問題について、大村真司弁護士に聞いた。
●景表法の規制の範囲内であれば「無効」とは言い難い
「昔、『カレーハウスCoCo壱番屋』で、1300グラムのカレーを制限時間内に食べ切ったら『無料』というのがありました。わたくしも司法修習生のころ、食べ切ったことがありますが、テレビを見ていると、そんなレベルのものではない大食いチャレンジメニューがあるようですね。
さて、大食いチャレンジですが、本来は、一定の代金を支払うのが当たり前なので、罰金と称するものも含め、失敗の場合に支払うのが『正規料金』であり、無料サービスや懸賞金が『条件付の報酬』と考えるのが、実態に即しているように思います」
どのような法律が関係しているのだろうか。
この場合、問題になる法律は『景品表示法』です。景品類の最高額などが規制されています。景品類とは、(1)顧客を誘引するための手段として、(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する(3)物品、金銭その他の経済上の利益、とされていますから、無料サービスや懸賞金は景品類に該当します。
景品類の提供のうち、『特定の行為の優劣または正誤によって定める方法』によって、提供される人や金額を決めるものを『懸賞』といいます。最高でも取引価額の20倍(上限10万円)までとされています。
このことからすると、飲食物の代金と懸賞金の合計がこの範囲なら問題ありません。大食いチャレンジは、通常範囲内なのではないでしょうか」
「罰金額」が高い場合はどうなのだろうか。
「もちろん、『罰金額』が高いものは、飲食物の対価として暴利ではないか、という問題も一応ありますが、もともと『価格は自由に決定してよい』というのが基本的な法の立場ですから、その部分をとらえて、公序良俗違反というのは、よほどのことがないかぎり難しいです。
今回のケースでは、景表法の規制の範囲内であれば、『無効』とは言い難いように思います」