「お試し」のつもりで買ったのに、定期購入になっていたというインターネット上の消費者トラブルが急増している。「定期購入」の表示が小さいなど、分かりづらさが原因になっているようだ。解約にもなかなか応じてもらえないという。
国民生活センターによると、こうした相談は年々増えており、2015年度は前年度の3倍以上となる5620件の相談が寄せられた。2016年度は、4月・5月だけで1600件近くあり、過去最高ペースとなっている。
センターは、契約内容をよく確認するよう呼びかけているが、分かりやすく表示しない業者側にも問題がありそうだ。お試しのつもりで購入したのに、実は定期購入だった、という場合、解約はできないのだろうか。正木健司弁護士に聞いた。
●表示が不明確なら解約できる
結論から言うと、明確な表示がない場合は解約できるでしょう。法律構成は、次のように考えられます。
まずは、「錯誤無効」(民法95条)です。仮に定期購入であることが書かれていたとしても、どこにあるか分かりにくい場合、「表示」と消費者の「内心」(1つだけ購入するつもり)に不一致があると考えられます。消費者に重過失がなければ錯誤として無効です。他の表示と紛れて小さな字で書かれているような場合は、消費者に重過失があるとまでは言えません。また、販売業者が申込み内容の確認画面を設けなかった場合は、消費者に重過失があっても錯誤無効を主張できます(電子消費者契約法3条)。
次に、「不利益事実の不告知による取り消し」(消費者契約法4条2項)が考えられます。販売業者が、定期購入であることを明確に表示しなかった場合、不利益事実をあえて告知しなかったものと言え、取り消しを主張することも考えられます。
同種のトラブルが多いことから、今国会では「消費者契約法」の一部が改正され、「消費者の不作為をもって新たな消費者契約の締結の意思表示を擬制する条項の無効」(改正後の10条例示条項)が設けられました。2017年6月3日からは、消費者が意思表示をしていない定期購入契約についての条項は無効となり、途中解約することが可能と考えます。
以上から、契約そのものが無効ないし取り消されるため、代金を支払う必要は無くなり、全額返金してもらうことになります。
なお、意図的に表示を分かりづらくしたり、解約の連絡を受け付けなかったりする事業者について、特に罰則はありません。ただし、顧客の意思に反して申込みをさせようとする行為や、契約の解除によって生ずる返金債務の不履行があった場合には、主務大臣による指示等の対象となります(特定商取引に関する法律14条1項1号・2号)。