米国で高校生らが集団で旅客機の搭乗を拒否されるという出来事があり、国内外で話題になっている。
CNNの報道によると、6月上旬、米サウスウエスト航空のニューヨーク発アトランタ行きの便に、私立高校の生徒101人と教員8人が搭乗した。しかし、生徒たちは客室乗務員の指示に従わず、座席から立ったり、携帯電話を使用したという。
機長が注意しても聞かなかったため、最終的には109人全員が機内から降ろされた。その後、生徒らは同社が手配した別の便に複数に分かれて搭乗できたという。教員らは、指示を聞かなかったのは一部の生徒だけで、全員を降ろす必要はなかったと主張しているそうだ。
かなり異例の事態だったことがうかがえるが、日本でも2011年、出発前の機内で「(荷物に)爆弾が入ってるから気をつけてね」と冗談を言った男性が搭乗拒否になっている。では、このような「搭乗拒否」はどのような基準で判断されるのだろうか。旅行法や航空法の実務に詳しく、搭乗拒否についての論文も書いている金子博人弁護士に聞いた。
●「搭乗拒否」については機長に幅広い権限がある
「飛行機では『疑わしきは搭乗させない。降機させる』のが原則です。航空法では、航空機の乗客の搭乗を拒否したり、搭乗後に降ろしたりする『運送の拒否』については、機長に権限が集中しています(73条の3)。
航空機の安全を害するもの、人や財産に危害を及ぼすもの、機内の秩序規律に違反するものなどに対しては、機長は『降りろ』と要求できます。さらに、拘束したり、搭乗を抑止する措置をしたり、降機させたりする権利と義務を負っています。必要であれば、航空機を着陸させる権限も機長にあります。このような規定は各国にもあって、各種の国際条約も、それを前提にしています」
機長にそこまで大きな権限がある理由は?
「航空機がそもそも脆弱な運送手段だからです。安全運航は絶対ですし、機内は閉鎖空間で逃げ場もありません。機内の規律はとても重要で、乗務員の指示に従わないものは、そもそも乗せるべきではないのです。
たとえば『爆弾が入っている』などという発言があったとしたら、それがウソだと即座に、かつ確実に確認できない限り、降ろされるのは当然だと言えます。また、騒いだ高校生についても、『他の生徒が規律に従うかどうか』を、機長が即座に、かつ確実に確認できない限りは、降ろされてもやむを得ないでしょう」
降ろされた乗客には、不満が残るのではないか?
「もちろん乗客も、不服があればあとから争うことはできます。ただし、『その当時、乗客自身が無害だったことを、その場ですぐに確認できたはずだ』と立証するのは、容易ではないでしょう」
航空機の性能や安全性が著しい進歩をとげ、事故率も大幅に下がったとはいえ、やはり空の安全を確保するためには、一人ひとりの協力が欠かせないという点に、変わりはないということだろう。