商品レビューに「星5つ」など、不当に高い評価を書き込んで「対価」を得る――。そんな捏造レビューの書き込みに対して、米アマゾン・ドット・コムが厳しい対応を講じている。
米アマゾンは今年4月、売り手やメーカーから依頼を受け、高い評価の口コミを有料で投稿していた業者を訴えた。さらに、米ニュースサイト「Tech Crunch」によると、このほど、オンラインでフリーランスのライターなどに仕事を発注できるサイトを通じて、5つ星のレビューを提供していた男性を訴えた。
米アマゾンが具体的にどんな請求をしているかは明らかではないが、実際に商品を使ったことがないのに賞賛するレビューを書くことは、法的にはどんな問題があるのだろうか。消費者問題に詳しい上田孝治弁護士に聞いた。
●「アマゾンの通販サイトそのものの信頼性に関わる」
「もし、日本でも同様に、アマゾンが捏造レビューを書き込んだ人に対して裁判を起こすとすれば、考えられるのは、不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟でしょう」
上田弁護士はこのように指摘する。
「利用者にとっては、アマゾンを信頼して買い物をするうえで、『実際に商品を購入した人』が利害関係なしに商品を評価するレビューがあることが、不可欠といえます。
そのため、アマゾンは、金銭を受け取ってレビューを投稿することや、商品の利害関係者がレビューを投稿することを禁止しています。
アマゾンからすれば、レビューの信頼性を揺るがすような『捏造レビュー』は、アマゾンの通販サイトそのものの信頼性に関わる問題といえるでしょう。
アメリカで訴訟が起こされたのは、そうした信頼性を揺るがす行為は『たとえ投稿者が個人であっても許すことはできない』というアマゾンの姿勢の現れではないでしょうか」
捏造レビューを書き込んだ人は、アマゾンに賠償しなければならないのだろうか。
「単なるレビュー投稿の削除だけでなく、損害賠償を請求するとなると、捏造レビューが投稿されたことによって、アマゾンに『損害』が生じていることが必要になります。レビュー投稿と損害の因果関係、損害の内容や性質が問題となります」
●捏造レビューを信じて購入した消費者は?
商品レビューに記載してある内容を信じて商品を購入した消費者については、どうだろう。
「実際に商品を購入したところ、投稿内容と全く異なる商品であったというような場合であれば、投稿者に対して不法行為を理由とする損害賠償請求ができる可能性があります。
もっとも、その個人によるレビューの内容が単なる抽象的な感想にとどまり、具体性を欠くような場合には、通常、そのレビューだけを根拠にして、消費者が商品を購入することはないでしょう。
そのような場合はレビューと購入との間に因果関係が認められず、損害賠償請求は認められないことになります」
上田弁護士はこのように述べていた。