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リコール知らずに欠陥製品を使って「火災発生」 消費者の「自己責任」なのか?

リコール知らずに欠陥製品を使って「火災発生」 消費者の「自己責任」なのか?

長崎市のグループホームで2月上旬、火災が発生し、5人の入所者が亡くなった。この火災では、TDKの加湿器が有力な火元とされ、同社の社長が記者会見で「その可能性が高い」と認めたうえで謝罪した。また3月13日には、経産省がTDKに対して、消費生活用製品安全法にもとづく危害防止命令を出し、問題の加湿器の早期回収などを指示した。

この加湿器については、1999年にTDKが当時の通産省にリコール(回収・無償修理)を届け出ていた。その後、新聞広告などで一般に告知し、販売台数の約7割を回収していた。しかし、グループホームはリコールの対象になっていることに気づかず、使い続けていたという。

問題のある商品について、消費者がリコールを知らずに使い続けた結果、事故が起きた場合、その責任はだれが負うのだろうか。消費者の「自己責任」なのか、それともメーカーが補償すべきなのか。尾崎博彦弁護士に聞いた。

●メーカーの責任は「リコール」によって消えるわけではない

「一般論としては、リコールを知らずに使い続けた消費者に事故が起きた場合であっても、リコールの事実のみをもって、メーカーが免責されるわけではありません。なぜなら、リコールにより、製造過程におけるメーカーの過失や製造物の『瑕疵』(かし)、すなわち欠陥が、個別の製品について解消されたわけではないからです」

このように尾崎弁護士は「たとえリコールをしても、メーカーに損害賠償の責任がある」と説明したうえで、次のように続ける。

「そもそもメーカーとしては、危険な製品を流通させたことに責任があります。そうである以上、その製品をすべて回収すべきであって、リコールを呼びかけただけでその責任を免れないのは当然です。製造物責任法において、リコールがなされたことを免責事由にしていないことからも、この点は明らかです」

つまり、欠陥商品を製造・販売してしまったメーカーは、全力でその商品を回収すべきということだ。ただ、もし消費者がメーカーを訴えて裁判になった場合、メーカー側は、「消費者側にも過失があるとして、過失相殺による減額を主張する可能性がある」という。その場合、どうなるのだろうか。

「消費者には、その製品がリコールの対象になっていることを知るべき義務や責任はありません。したがって、リコールを知らなかったことが『消費者の過失』となることは、まずあり得ないと思われます」

欠陥商品のリコールがされると、メーカーは自社のウェブサイトや新聞の広告で回収を呼びかけるが、すべての消費者がその告知に目を通しているわけではないから、消費者の「自己責任」とするのは無理があるということなのだろう。結局のところ、メーカーとしては、人に危害を及ぼすような製品を流通させないように、細心の注意を払って安全対策をするほかないといえそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

尾崎 博彦
尾崎 博彦(おざき ひろひこ)弁護士 尾崎法律事務所
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員

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