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「あれ、頭入らない」J2山形、不良品ユニで炎上…のはずが笑いのネタに 迅速対応で危機切り抜ける
ナツユニ。モデルの山田康太選手(左、モンテディオ山形HPより)頭の入らなかった男性サポーター(右、男性提供)

「あれ、頭入らない」J2山形、不良品ユニで炎上…のはずが笑いのネタに 迅速対応で危機切り抜ける

今年7月、J2モンテディオ山形で夏限定のレプリカユニフォーム「ナツユニ」に頭が通らないという事案が発生した。ナンバーなどを入れれば2万円にもなる高額商品の不具合だけに、炎上してもおかしくない事態だ。

しかし、災い転じて福となす。頭が入らない写真をSNSでアップするサポーターたちが、怪獣になぞらえて「ジャミラ部」として盛り上がる結果に。トラブルも楽しめてしまったのは、クラブ側のスピード感ある対応があってこそだった。

●初めての大規模トラブルに顔面蒼白

「ユニフォームが入らなくて…僕の頭がでかいんでしょうか」。いち早くナツユニが届いたサポーター数人からクラブ側に連絡があったのは7月14日。すべて受注販売で700人が約2カ月前に購入し、発送が始まっていた。

製品の問題なのか、個体差なのかー。というのも、選手がモデルとして前撮りしていたユニフォームや、クラブの手元にある製品に不具合はなかった。現在も原因は調査中だが、量産段階で襟元の縫い止め位置が高くなってしまった可能性があるという。

ナツユニは7月23日から9月3日のホームゲーム5試合で着るための限定商品。山形伝統の藍染めをテーマに、白い襟付き仕様のスリムなデザインで、襟元の位置が高かったのは、かっこよさと機能性を重視した結果だった。

「オーセンティックユニフォームなので、襟元がだらしなく開かないようにしたいとの思いがありました。ちょっと攻めすぎたのかもしれません」(グッズ担当者)

発売前から注目されていただけに「注文してくださった方は、これを着て応援したいと明確な意思を持っている。なんとか1試合でも多く着てもらわなければ」と社長含めクラブは対応を急いだ。

問題なく着用できる人もいるようだったが、700枚全てを取り替えることを決めた。また、既存のユニフォームについても、ホーム戦会場や郵送で預かり、修繕して返すという対応をすることにした。

翌15日には、全顧客にメールで連絡し、プレスリリースもした。前代未聞の大規模トラブルに、担当者たちは血の気が引いたようにシリアスな日々が続いたという。

●心の広いサポーターたち 逆手にとって盛り上がる

一方、深刻なクラブの雰囲気をよそに、サポーターは別の盛り上がりを見せていた。頭が出ない状態が、ウルトラマンに出てくる怪獣ジャミラに似ているとして、ツイッター上で「#モンテディオジャミラ部」を結成。写真を投稿する入部者が増加し、「心が広いサポーター」などと他のクラブサポからも賞賛される事態となっていた。

実際に購入していない人にも、SNS上で情報が回る時代だ。企業側からすれば、対応の経過まで全てつまびらかにされる怖いものでもある。担当者は「面白がってくれるサポーターがいて、救われた気分でした。最初は『終わった…』と思いましたから。ちゃんと新しいものが届くんだと、すぐにお伝えできたからだと思います」と振り返る。

●心掛けたのはスピードと正確な情報

メーカーと掛け合い、全速力で改良品を製作、選手ごとのナンバーも全て貼り直した。7月30日には「8月13日のホーム金沢戦の前日には配送完了する」とのリリースを発出。13日はスタジアムにジャミラ部の面々が登場し、サポーターの間で話題になっていた。

担当者は「どんな不具合があったのかや、新しいユニフォームが届くことなど正確な情報をいち早く伝えようと思いました。決して安くない買い物をしてくれた方に安心感を持っていただくことを最優先しました」という。

実は、約3年前に就任したモンテディオ山形の社長相田健太郎氏は、楽天イーグルスやヴィッセル神戸での経験がある人物だ。何に対してもスピード感をもって行うようなマインドが社員に浸透していたことも背景にある。

今、クラブ内は発送が8月中旬に間に合ったことで安堵感に包まれているが、不良品を回収した上で明確な原因を究明して再発防止に努めている最中だという。ちなみに受注生産のため、今季のナツユニを今後手に入れることは難しい状態だ。

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