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2018年11月10日 09時51分

働き方改革で「ランチミーティング」週3に増加…消えた「私の休憩時間」

働き方改革で「ランチミーティング」週3に増加…消えた「私の休憩時間」
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

「ランチミーティング入れたからよろしくね」。最近、上司からこんなメールがよく届く。職場のメンバーで共有しているGoogleカレンダーに「ランチミーティング」の表示が入るたびに「またか」と思う。週3回入ることも珍しくない。「私の純粋な休憩時間はどこへいったの」。東京都内のある大手メーカー(東証1部)で働く30代女性社員は苦笑いする。

●「週2〜3回」当たり前

女性は大学卒業後に総合職として入社し、いまは本社でフルタイムで働いている。「働き方改革」の名のもと、ここのところ残業時間は減り、早く帰りやすくなったという実感はある。ただ、代わりにランチミーティングの存在感が増してきたことに違和感を抱いている。これまでは月2回程度だったのが、ここ半年ほどは週2〜3回のペースで入っているという。

「楽しいランチだと感じたことは一度もありませんね」(女性)。会議室に弁当が用意されていたり、持ち寄ったりと食べるものは様々だが、11時半〜13時半の時間をめがけて1時間程度のランチミーティングが続々と入る。夜遅くまでの残業がしにくくなった一方で、会社は業務の量や質を見直せていない。そのぶんの「しわ寄せ」であることは明らかだ。

とはいえ、ランチミーティングがないと帰る時間が後ろ倒しになるかもしれない。さらに、夜ご飯を食べながらミーティングすることになったら、終了後に「飲み会」に移行する懸念もある。そのため女性は、幅を利かせるランチミーティングに異論を唱えられずにいる。働き方改革が進む裏で、ランチミーティングが増殖していることが気がかりだ。

ランチミーティングに潜む労働問題はどんなものがありそうか。河村健夫弁護士に聞いた。

●かなりのケースで「労働時間」に該当

ーー昼食を取りながら社員と業務について話し合う「ランチミーティング」は労働時間と捉えることはできるでしょうか

「ランチミーティングはかなりのケースで『労働時間』に該当し、無給でランチミーティングを行うことはできません。

昼休みなど『休憩時間』は、労働者がその時間を自由に利用できることが必要です(労働基準法34条3項)。逆に、自由に時間を利用できず、使用者(=会社、上司)の指揮命令下にあると評価されれば、それは『労働時間』であり会社に給与支払義務が生じます。

具体的にどのケースが『指揮命令下』といえるかは、残業代などの各種裁判で整理されており、(1)使用者が指示した場所で、(2)使用者から義務付けられ、または余儀なくされた場合、には指揮命令下にあるものと理解されています」

ーー女性は会社にどのようなことを相談・請求しうるでしょうか

「相談の女性のケースでは、(1)上司から会議室と場所を指示され、(2)『ランチミーティング入れたからよろしくね』とメールで連絡されれば参加を『余儀なくされ』るでしょうから、当該ランチミーティングは休憩時間ではなく労働時間と評価されます。

もっとも、会社業務の円滑な運営のために、ランチミーティングが役立つこともあるでしょう。また、働く側にとっても夜まで残業となるより、それを受け入れて定時に帰りたいこともあるでしょう。

その場合には、ランチミーティングを設定する代わりに、法定の『休憩時間』(例えば、労働時間8時間超の場合には1時間)を付与すれば特に問題はありません(一斉付与の例外を許す協定等は必要です)」

●参加を余儀なくされた「証拠メール」に価値

ーー残業が発生するくらいなら、ランチミーティングを我慢して受け入れた方がマシだという考え方をする人もいそうです。この点についてはどう思われますか

「『ランチミーティング終了後に休憩を付与さると結局定時では帰れないので、休憩時間中も仕事をして定時に帰る』という方もいるかもしれません。

ただ、労働基準法は労働者の生命・健康を守る強行法規という性質があります。労働者自らが休憩時間は不要と考えて働いても、その時間が『労働時間』である限りは使用者に給与支払義務がありますし、休憩時間を付与しない違法状態を生じてしまいます。過重労働は体を壊します。あまりお勧めしません」

ーーランチミーティングと言っても強制的に参加しなければいけない趣旨のものなのか、実は自由参加のものなのか分かりにくいこともありますよね

「はい。ランチミーティングの問題点は、参加を余儀なくされる強制参加なのか、出ても出なくても良い自由参加なのかの境界が外形的に分かりにくい点です。

当該女性の立場に立って考えるならば、たとえば一度は上司に『大学時代の友人との食事会の予定が重なっていますが、調整が必要でしょうか』といった質問をメールで投げかけ、『関係部署の人間が集まれる日がその日しかないので、友人との食事をずらしてください』といった返答をもらうことです。

このような証拠があれば、参加を『余儀なくされた』ことの証拠となります。証拠さえあれば、会社に対してランチミーティング時間に相当する賃金請求や、ランチミーティングの時間以外に『休憩時間』を付与することを求めることができます」

●「できたら参加して」では不十分

ーーランチミーティングを設定する側の管理職(先輩など)は、どのようなことを留意し、またはどのようなことを召集される側に伝えるべきでしょうか

「ランチミーティングの設定側の留意事項としては、業務として行うつもりがなく、懇親のため自由参加であればその旨を明確に示すことです。『できたら参加してください』では不十分で、『参加する、しないは自由です』と明示することが必要です。

また、参加者の顔ぶれを前もって示すと、部下は『このメンバーでは参加しないとまずい』と考えます。事前に顔ぶれは示さないほうが良いでしょう。もし、業務の一環としてランチミーティングの設定が必要と判断した場合には、その前後に、参加者自身が自由に使える『休憩時間』を必ず付与してください」

(弁護士ドットコムニュース)

河村 健夫(かわむら・たけお)弁護士
東京大学卒。弁護士経験17年。鉄建公団訴訟(JR採用差別事件)といった大型勝訴案件から個人の解雇案件まで労働事件を広く手がける。社会福祉士と共同で事務所を運営し「カウンセリングできる法律事務所」を目指す。大正大学講師(福祉法学)。
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