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2013年09月30日 17時05分

教材開発会社の朝礼で「エイエイオー!」 こんな業務命令にも従うべきか?

教材開発会社の朝礼で「エイエイオー!」 こんな業務命令にも従うべきか?

止まらない業績の悪化に歯止めをかけるため、ついに社長が自ら起死回生の挽回策を編み出した。その秘策とは……社員全員による「エイエイオー!」だ。毎朝、朝礼で左手を腰に当て、右手で拳を突き上げながら声を張り上げ、気合いで業績回復を目指すのだという。

スポーツの試合でもあるまいし、今どき経営者がこんなことを言い出したら、従業員の中には転職活動を始める人もいそうだが、これは最近、実際に東京都内のある教材開発会社であった「実話」だという。

従業員たちも当初は渋々……という感じだったが、そのうちに幹部が「手の挙げ方に勢いがない者や、声の小さい者は、ペナルティーを科す」と言い出した。そのため今では全員が勢いよく拳を突き上げながら、「エイエイオー!」と絶叫するという、異様な光景となっているそうだ。

必ずしも業務に直結するとは言えないこうした指示も、従業員が従うべき「業務命令」にあたるのだろうか。また、もしこの幹部が言うように何らかのペナルティーを科されたら、従業員はそれを甘受せざるを得ないのだろうか。企業法務を専門とする山田長正弁護士に聞いた。

●業務命令の内容が合理的でない場合は、無効になる可能性も

「業務命令とは、使用者(雇う側)が業務遂行のために、労働者に対して行う指示や命令のことです。

業務命令は、労働契約に基づき認められるものです。そのため、労働契約で取り決められたと解される合理的な範囲を外れたような業務命令は、業務命令権の濫用となり、無効となります」

つまり、労働契約を著しく逸脱するような業務命令は許されないということだろう。ただ、一般的な労働契約では、あらかじめ全ての業務内容が具体的に列挙されているわけではない。そこで、契約から合理的に導き出される範囲を逸脱するような命令は許されない、ということになるのだろう。

山田弁護士はこう続ける。

「したがって、業務命令の内容自体に合理性がなかったり、業務命令が懲罰的目的で発せられたような場合、その業務命令に法的な拘束力はありません。そのような命令を受けた労働者が命令を拒否しても、懲戒処分その他の不利益を受けることはありません。

また、内容の不合理性が大きい業務命令や、懲罰的目的で発せられた業務命令はパワーハラスメントに該当し、違法となりえます」

●「エイエイオー!」には、プラスの側面もある

つまり、あまりにも不合理な業務命令は拒否できるだけでなく、「違法」になる場合もあるようだ。それでは「エイエイオー!」はどうだろうか。

「大きな声を出させることについては、業務命令の目的や職種、企業文化等にもよりますが、直ちに業務命令として違法になるとは考えません。

たとえば、社員の一体感の醸成や地声が大きくなり発声力が向上する、雑念を吹き飛ばす、集中力の向上等の効果があり得るため、これらを目的として業務命令を発することはあり得るでしょう。

もっとも、過度に大きな声を出させることは、業務命令の内容が不合理だとされる場合もありますし、安易にペナルティー(懲戒処分)を行うと処分の相当性を欠く場合もありえます。

また、これらにより社員の士気低下につながることもありますので、企業としては慎重に対応すべきです」

なるほど、プラスの側面もあるので一概に問題があるとは言えない……。しかし、懲罰的な意味で大声を出させたり、声が小さいことへのペナルティーが大きすぎたりすれば話は別ということだろう。一体感を生むためのかけ声で本末転倒なことにならないよう、会社側も十分な注意をしたほうがよさそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

山田 長正弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
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