若手サラリーマンのAさんは東京の大学を卒業後、Uターン就職しました。学生時代は電車移動ばかりで、自動車の運転経験はほとんどありません。内勤だったこともあり、会社近くの物件を借りて、徒歩で通勤することにしました。
ところが入社4年目、内勤だったAさんは、外回りの部署への異動を命じられます。地方都市で車社会だからか、周囲は仕事に自家用車を使っています。Aさんも車のレンタルや購入を検討することにしました。
ただし、困ったのが駐車場です。自宅周辺の駐車場代は月1万円かかりますが、仕事でしか車を使わないのでもったいなくて仕方がない。会社の駐車場に停めて、節約できないかと考えていますが問題ないのでしょうか。鬼沢健士弁護士に聞きました。
●注意すべきは駐車場までの距離
「会社にちゃんと許可をとってくださいね」。鬼沢弁護士の回答はとてもシンプルです。
「無料の場合、法的には『使用貸借契約』が成立します。有料なら『賃貸借契約』になり、貸し主が勤め先という点は変わっていますが、それ以外は一般的な月極駐車場と同じです」
車を取得するには、車庫証明書(軽自動車なら保管場所届出)が必要になりますが、「会社の駐車場」で登録しても問題ないんですね。
「はい。ただし、車庫証明には、『駐車場などが住所から2キロ以内』などの要件があります。自宅からの距離には注意が必要です。会社にお願いして、保管場所証明をもらいましょう」
●会社に内緒でやると重いペナルティーを食らう可能性も
逆に会社の許可なく使うと、ペナルティーを受ける可能性もあるそうです。
会社の許可をとっていない場合、どこかを駐車場として登録しないと車を取得できません。たとえば、実家の住所で車庫証明をとり、内緒で会社の駐車場を使い続けたらどうでしょう。
「これは、『自動車の保管場所の確保等に関する法律』に違反する、いわゆる『車庫飛ばし』にあたります。罰金刑などに処せられることもある犯罪で、前科もつきます。
実家で車庫証明をとり、実際には会社の駐車場に停めている場合には、届け出ている自動車の『使用の本拠』を偽っていることになりますから、違法な車庫飛ばしにあたります」
さらに鬼沢弁護士によると、無断で利用したことで発生した損害賠償をすることになったり、場合によっては住居侵入罪や業務妨害罪といった犯罪が成立したりする可能性もあるのだとか。
Aさんの場合、いかに会社を説得するかが鍵になるといえそうです。