働き方改革の一環で副業のルール整備が議論される中、複数の職場で働く人たちを縛ってきた就労管理ルールについて、厚労省が見直しをする可能性が出てきた。日本経済新聞(11月27日電子版)が報じている。
現在では、組織をまたいで働く場合、労働時間は合算されて、計算されることになる。例えば、昼間の本業の会社で8時間、夕方以降に副業の会社で2時間働く場合、8時間をオーバーしているため、副業の会社が残業代を払わなければならない。このルールが有効に機能していないとして、見直しの対象になるという。
もし、合算が不要になった場合、労働者にとって、どんなメリットがあるのか。穂積匡史弁護士に聞いた。
●「ルールを緩和・撤廃するのでなく、きちんと守らせるという方向で進めるべき」
「企業にとっては、今後労働力人口が減少する中で、副業解禁により労働力不足を補えるのはメリットでしょうけれど、働き手にメリットは無いと思います。合算ルールは有効に機能していないというのですから、それを撤廃しても、実態は変わりません」
なぜ労働者にとって、メリットがないのか。
「まずは、なぜ副業を積極的にしたい人がいるのかを考えてみましょう。様々な理由が考えられますが、多くは、1つの勤務先からの給料では足りないので、収入を増やすために副業をせざるを得ないということではないでしょうか。しかし、そういった人が次々と副業をするようになれば、それだけ市場に供給される労働力が増えて買い手市場になり、賃金水準はますます低下します。
結局、一人ひとりが受け取る賃金は、それほど増えません。働く時間が増えても賃金が増えないので、むしろデメリットです。
そのうえ、長時間労働による労災のリスクも高まります。収入増は、副業解禁でなく、労使交渉や最低賃金引上げによって目指すのが得策です。
問題は合算ルールにあるのではなくて、合算ルールを含む労働時間ルールがきちんと守られていないことにあるのではないでしょうか。この1、2年、名だたる大企業の残業代不払いが次々と発覚しています。それだけルールが守られていないということです。
ルールを緩和・撤廃するのでなく、きちんと守らせるという方向で働き方改革を進めるべきです。そのためには、労働者が団結して、今以上に労働組合に結集して、労働市場と働くルールづくりに影響力を行使していく必要があります」