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2017年03月06日 10時00分

ユニクロ、企業秘密だった「海外の取引工場」公表…潜入ルポ・横田氏が指摘する課題

ユニクロ、企業秘密だった「海外の取引工場」公表…潜入ルポ・横田氏が指摘する課題
ユニクロは売上高で世界第3位

ファーストリテイリング(ファストリ)社は2月28日、中国や東南アジアなどにある「ユニクロ」の主要取引工場のリストを公開した。グローバル化が進む中、事業の透明性を高め、「環境と人権問題に一層の責任を果していく目的」としている。年内には「ジーユー」の工場リストも公開する予定だ。

ファッション業界では、発展途上国にある委託先工場での劣悪な労働環境が世界的に問題視されている。ファストリ社の取引工場をめぐっても、一部で長時間労働などが指摘されており、人権団体などが指導を強化するよう求めていた。

今回公表されたのは、縫製工場146カ所。内訳は中国88カ所、ベトナム28カ所、インドネシア13カ所、バングラデシュ8カ所、カンボジア4カ所、日本3カ所、タイ2カ所。ファストリ社によると、取引の長さや金額を基準に選んだそうで、公表された工場だけで全取引額の約8割を占めるという。

●2009年の柳井社長「企業秘密だから絶対にダメ」

ユニクロは長年、他社にノウハウを知られることなどを恐れ、取引工場のことはほとんど公開してこなかった。2016年の週刊文春「ユニクロ潜入ルポ」が話題になったジャーナリストの横田増生氏は、「2009年末、柳井正社長に海外の委託工場について尋ねたところ、『企業秘密にかかわることだから絶対にダメです』と言われました」と語る。

柳井社長に回答を拒否された横田氏は中国に渡り、独自にユニクロの生産委託工場を取材。『ユニクロ帝国の光と影』(文藝春秋、2011年)にまとめた。また、ユニクロ潜入中の2016年は、休暇をとってカンボジアの工場労働者も取材し、週刊文春で発表している。

横田氏の目には、現地の人々の暮らしは、日本人が想像できないほど貧しく映ったそうだ。安全対策が不十分な工場で、厳しいプレッシャーの中、長時間労働を余儀なくされているのに、労働者には十分な賃金が支払われていないという。

なお、横田氏はこのうち中国工場の労働問題についての記事などで、2011年にユニクロから名誉毀損で2億2000万円を請求されている(裁判では事実と認められ、請求は棄却された)。

●「公表だけでなく、取材や調査の受け入れが必要だ」

国連では2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則(ラギー原則)」が採択され、ブランド企業は、委託工場までさかのぼって、人権を保障しなくてはならないとされた。2013年に起きたバングラデシュの縫製工場(ラナプラザ・ビル)の倒壊以降、この考えはより重視されるようになっている。

こうした背景から、欧米の有名ブランドは委託工場の公開を進めてきた。アディダスやナイキなどが早い段階で実施しているほか、2016年には、米最大手のギャップや英マークス・アンド・スペンサーなども公開に踏み切った。

ユニクロのリスト公表について、横田氏は「世界的に見れば、対応が遅すぎる。公表の流れを受けて、対応を余儀なくされたと見るべきでしょう。一方で日本に限定すれば先駆的。国内だとユニクロ以外は聞いたことがありません」と語る。

横田氏によると、ユニクロは委託工場を絞り、工場内でのシェアを高める戦略をとっているという。資本を入れなくても、自社に都合の良い対応をとってもらえるためだ。それだけに、企業の責任も問われる。

「工場の場所が分かったのは大きい。ただ、カンボジアでは工場に取材を拒否されて、労働者に話を聞くしかなかった。公表だけでなく、取材やNGOの調査を受け入れて、より透明性をあげる必要があるでしょう」(横田氏)

また、海外の団体と共同して、ユニクロの委託工場を潜入調査した国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「リストの公開を歓迎します。労働問題そのものが解決したわけではありませんが、課題解決のとっかかりにはなるので、ほかの企業も続いてほしい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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