「アリさんマーク」で知られる引越社グループ会社「引越社関東」の男性社員が、営業職から「シュレッダー係」などに異動させられたのは不当だとして、地位確認などを求めている訴訟の口頭弁論が2月9日、東京地裁であった。
この日は、同社の井ノ口晃平副社長の証人尋問が行われた。井ノ口副社長は、男性をシュレッダー係に配転したのは、「秩序を守るため」「制裁ではない」と繰り返し述べたが、裁判官は「懲罰的に見えるんですが」と発言。裁判官から「あなたが(シュレッダー係に)行けと言われたらどう思いますか」と問われると絶句した。
男性社員は、支店の月別売り上げで1位になるなど、営業職として活躍。しかし、2015年1月、営業車の運転中に事故を起こしてしまった。その後も継続して仕事を続けていたが、3月に社外の労働組合に加入すると、会社の態度が硬化したと主張している。
男性はその後、営業職から、客への見積もり電話などをかけるアポイント部へ異動。さらに、遅刻を理由に6月からシュレッダー係に配属された。男性側はアポイント部、シュレッダー係への配転は、不当だと訴えている。
男性は現在も、シュレッダー係として働いている。この日、男性も尋問を受け、「1日中廃棄書類をシュレッダーにかけ続け、ゴミ置き場に持って行っている。会社に貢献してきたつもりなのに、みじめな思いだ」と涙ながらに語った。
●証人尋問での、井ノ口副社長と裁判官との主なやりとり
ーーアポイント部からシュレッダー係への配転は、懲罰的に見えるが?
副社長「懲罰ではない。(遅刻の)言い訳の内容が良くなく、職場の秩序が保てなかった。男性は過去にも遅刻をしている。客に迷惑をかける可能性があるため、客と接しない仕事(シュレッダー係)に変える必要があった」
ーーあなたが(シュレッダー係に)行けと言われたら?
副社長「………。制裁のつもりではやっていない」
ーーいつまでシュレッダー係を続けさせる? まずいのではないか?
副社長「弁護士にアドバイスされたので、営業職を含め、男性側に提案している。しかし、特に金額面で折り合いがついていない」
ーー提案じゃなくて、人事権で異動させればいいのでは?
副社長「条件が合っていないので、できない」
ーーシュレッダー係への異動も人事権でしょう?
副社長「こちらの判断でやらしてもらえるのなら、それはもう…。それはそれでやらしてもらえればありがたいですけど…」
ーー(異動後の)1年半は戻ってこないけれど、弁護士と相談してやられたら良いんじゃないでしょうか?
副社長「はい…」
裁判所は、アリさん側に対し、シュレッダー係から異動する際、どのような条件なら良いかを提示するよう求めた。ただし、男性側は「具体的な提案はまだ受けていない。丸く収まるのが一番良いが、会社はこれまでその機会を蹴ってきた」と語り、期待はしていないという。