典型的な「セクハラ」被害者といえば女性だが、少なからぬ男性が「逆セクハラ」に悩んでいるようだ。
厚労省によると、2012年度に都道府県が受け付けたセクハラ相談は女性からが5838件、男性からは549件だった。女性が減少傾向にある一方、男性は数は少ないもののほぼ横ばいで、減っていないという。
あけすけな下ネタの会話、過度なボディタッチ、しつこい休日のお誘い、交際相手がいないことへのからかい……こういった行為に抵抗を覚えるのは、女性だけではない。しかし、「逆セクハラ」はまだ世間の認知度が低く、相談窓口や友人が相手にしてくれないケースもあるようだ。
女性へのセクハラと男性への逆セクハラとでは、何か違いがあるのだろうか。また、逆セクハラ被害にあったらどう対処すべきなのだろうか。冬木健太郎弁護士に聞いた。
●「逆セクハラ」についても、企業に対処義務がある
「セクハラはもともと、女性に対する性的言動が問題視され、作られた概念です。しかし、実際には男性に対する性的言動も存在し、それをあえて『逆セクハラ』と呼ぶこともあります。
しかし、そもそもは同じものですから、どのような場合に『セクハラ』あるいは『逆セクハラ』にあたるかということについても、同じような方法で考えればいいのです」
――具体的には?
「まず、どんな行為がセクハラに当たるかについては、『平均的な女性(男性)』を念頭においたうえで、『一般的にそういう言動を受けた場合に嫌な気持ちになるかどうか』を考えるべきでしょう」
――では、自分自身が傷つけられても、周囲の人が問題にしなかったら、あきらめるべき?
「いえ、『一般的には嫌な気持ちにはならない』というような言動でも、(1)その女性(男性)が嫌だということを明確に述べている場合や、(2)嫌がっていることをいろんな事情から推測できる場合などには、『セクハラ』『逆セクハラ』にあたるというべきでしょう」
――ボディタッチなどは人によって受け止め方が違いそうだが・・・・。
「そうですね。たとえば職場の男性上司が女性の部下にボディタッチをした場合、平均的な女性を基準とすれば、嫌な気持ちになるから『セクハラ』になるでしょう。でも、女性からのボディタッチを嫌がる男性は、そこまで多くないかもしれません。
しかし、先ほどの基準を当てはめて考えれば、平均的な男性が嫌がらない場合であっても、身体を触られた男性が『嫌だ』と明示的に述べていたり、あるいはいろんな事情から嫌だと思っていることが推測できる場合には、『逆セクハラ』にあたるというべきです」
――では、『逆セクハラ』を受けた際、男性はどうすればいい?
「たとえばですが、逆セクハラ行為をした女性などに対し、損害賠償請求をすることが考えられます。もしそのような行為があったのが職場なら、会社に対して使用者責任を問うことも考えられます。
つまりは、職場で逆セクハラ行為があれば、会社自体が訴えられるリスクがあるわけです。先入観から抜け出せない企業もあるようですが、今後は積極的に逆セクハラについての防止措置を講じるべきでしょう」