全国一律で最低賃金1500円以上を──。
今年度の最低賃金改定に向けた議論が本格化するのを前に、全国労働組合総連合(全労連)や国民春闘共闘委員会(国民春闘共闘)などが7月1日、都内で記者会見を開いた。
政府の賃上げ方針を評価しつつも「物価高で困窮する労働者の実情に対しては不十分」として、早急な大幅引き上げと地域間格差の是正を強くうったえた。
●政府の姿勢を評価も「スピード感」に課題
政府は6月13日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、「賃上げ政策こそが成長戦略の要」と明記し、2020年代に全国平均1500円を目指す方針を示した。2029年度までの5年間で集中的に取り組むとされる。
この方針について、全労連の秋山正臣議長は「最低賃金の引き上げに向けた政府の姿勢が明確になった点は歓迎したい」と評価する一方、スケジュール感について「低賃金と物価高騰の中で苦しむ労働者の実態に照らすと、到底十分とは言えない」と批判。全国一律で速やかに1500円以上に引き上げるよう強く求めた。
●「3要素」に縛られない決断を
現在の地域別最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金水準、(3)事業者の支払い能力の3要素を基準に決められている。
秋山議長は、この「3要素」に固執する姿勢が大幅な引き上げを阻んでいると指摘し、これにとらわれない「大胆な決断」が必要だとうったえた。
さらに、地域間格差の是正に向けた具体的な方策を示すよう要望。2024年度の最低賃金は、東京都が1163円で最も高く、秋田県が951円で最も低い。格差は212円と、前年度より8円縮小したものの、2006年の109円と比べると約2倍に拡大している。
また、審議期間が例年2週間程度と短期間で終わることについても「本当に十分な議論がされているのか疑問が残る」とし、審議過程の公開も求めた。
●今やコンビニのおにぎりが高級品に
非正規労働者で構成される「下町ユニオン」の運営委員長、石井美登理さんは「今やコンビニのおにぎりが高級品。子どもに『買えない』と言わなければならないなんて、異常事態です」と生活の厳しさをうったえた。
下町ユニオンの多くは、パートやアルバイトなど非正規で働く女性たちであり、大半が最低賃金で働いているという。
物価高騰の影響は家庭にも深刻で、石井さんは「『おかわりしないで』『食べ過ぎないで』と、食べ盛りの子どもに言わざるを得ない家庭もあります。そんな状況は本当におかしい」と語気を強めた。
今年3月に実施した相談会には、1日で116件の相談が寄せられた。これはコロナ禍以降の5年間で最多だったという。
石井さんはさらに、母親たちが家庭で抱える負担の大きさにも触れ「お母さんたちは仕事に加えて、子育て、保育園や学童、PTA、さらには膨大な書類対応など、子どもに関する多くの業務を担っています。現場からは悲鳴が上がっています」と述べ、最低賃金の早期かつ大幅な引き上げを切実に求めた。