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「バレンタインチョコ、くれないの?」 上司が部下に言ったらパワハラ?

「バレンタインチョコ、くれないの?」 上司が部下に言ったらパワハラ?

日本では、2月14日を中心とするバレンタイン・シーズンに女性から男性に贈られるものとされているチョコレート。男性の多くは「もらえればうれしい」と単純に考えているかもしれないが、働く女性は、職場でチョコレートを配るべきか、あげるとしたら誰にあげるべきか悩んでいるらしい。

そんなオフィスの片隅では、男性の上司が女性の部下に向かって「チョコレート、くれないの?」と気軽に口にすることもあるようだ。このなにげない一言は、チョコレートを渡すことを迫っているようにも見えるが、「パワハラ」にならないのだろうか。森本明宏弁護士に聞いた。

●「チョコレートをくれないの?」発言は、パワハラにあたる

森本弁護士によると、厚生労働省が発表している「職場におけるパワハラ」の定義は次のようなものだ。「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

ということは、一般的に上司は部下に対して地位は上なのだから、「職務内の優位性」をもっていると言えるだろう。ならば、男性の上司が女性の部下に対して「バレンタイン・チョコレートをくれないの?」と発言する行為はどうなるのだろうか。

「そのような行為は、男性上司が女性部下に対する職場内での優位性を背景として、業務とは関連のない行為を求めるものです。チョコレートを求められた女性の部下は、断れば何か不利益を受けるのではないかと不安になったり、精神的な苦痛を受けることが多いでしょうから、男性上司のこのような発言はパワハラにあたると考えます」

●暗にチョコレートを望むような態度をとった場合は?

どうやら、男性の上司が「チョコレート、くれないの?」と発言したら、パワハラになってしまうようだ。では、チョコレートを求める言葉を口にしないまでも、暗にチョコレートを望むような態度をとった場合はどうだろうか。

「『チョコレート、くれないの?』という具体的な言葉がなかったとしても、例えば『もうすぐバレンタインデーだな』とか『バレンタイン・チョコレートは義理チョコでも、男性は嬉しいもんだよな』といった発言をこれ見よがしに繰り返すなど、暗にチョコレートを望むような態度を示す場合には、やはり先ほどのパワハラの定義にあたり、パワハラと判断されてもやむを得ないでしょう」

パワハラは、上司から部下に対する行為だけをさすのではなく、先輩・後輩や同僚同士の関係でも、「職場内の優位性」を背景にしたものであれば、該当する場合があるという。男性諸君はいくらバレンタイン・チョコレートが欲しくても、職場ではグッと言葉をこらえ、素知らぬ顔をしてチョコを待っているほうがいいようだ。 

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

森本 明宏
森本 明宏(もりもと あきひろ)弁護士 四季法律事務所
愛媛弁護士会所属(2002年弁護士登録)。2010~2011年度、愛媛弁護士会副会長。2020年度、愛媛弁護士会会長。日本スポーツ法学会会員。

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