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親の危篤に「まだ死んでないんだろう」と言う上司…僕はパワハラに立ち向かった(下)
(イラスト/lico106)

親の危篤に「まだ死んでないんだろう」と言う上司…僕はパワハラに立ち向かった(下)

●前回までのあらすじ

工場勤務で日々残業続きの翔太(24)。最近パワハラ気質の嶋田さん(51)が上司になり、精神的に参っていました。

そんな中、病院から「入院中の母が危篤」との連絡が…。しかし、嶋田さんは僕に「まだ死んでないんだろう」と言い、帰らせてくれませんでした。

落ち着かないまま事務作業を続ける翔太。そしたら、病院から再び電話がかかってきて…。

<前回はこちら!>

●「死ぬタイミングが悪いな」

「危篤です」と連絡があった数時間後、病院から再び電話があり、母が息を引き取ったと報告を受けました。近くに親族もおらず、たった1人の家族だった僕も行けず、最期をひとりで迎えた母…。

僕が堪えきれず廊下で泣き出すと、横で嶋田さんは半笑いで「死ぬタイミングが悪いな」と言い放ちました。

「なんでここまで言われなきゃいけないんだ…」。僕は嶋田さんの横を通り抜けて、急いで病院に向かいました。

●「僕はなんでここまでして働いているんだろうか」

あれから1週間。葬儀も終わりました。1週間ぶりに出社した僕は、同僚からお悔やみの言葉を言われる度に、会社で嶋田さんから言われたひどい発言を振り返りました。

深夜近くまでの残業、上司の暴言…。僕の仕事が遅いから自分のせいだと思っていましたが、今回の件でようやく目が覚めました。これは普通じゃない。どうやらこのおかしな状況に慣らされてしまっていたようです。

僕の体験したことは、「パワハラ」になるんじゃないかと思いました。そこで、弁護士に聞いてみることにしました。

●上司の言動は「パワハラ」にあたる

村松由紀子弁護士によると、パワハラには定義があり、(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は労働者の就業環境が害されることだそうです。

そして、今でも許せない「死ぬタイミングが悪い」という言葉について。

村松弁護士からは、まずはハラスメントの証拠を集めること、また、会社側と交渉するために労働組合に加入するのも一つの手だと教えてもらいました。

それから僕は、社外の労働組合にも加入し、証拠が集まり次第、会社と交渉することを決めました。

夕方から事務作業をするときは、胸ポケットに忍ばせたボイスレコーダーで音声を録音しています。暴言を言われても、後に証拠になると思うと少し安心感があります。これで、ひどい扱いをしてくる嶋田さんをぎゃふんと言わせたいです。

(弁護士ドットコムに寄せられた相談を元にしています)

プロフィール

村松 由紀子
村松 由紀子(むらまつ ゆきこ)弁護士 弁護士法人クローバー
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士4名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。

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