「気軽に登れる山」として親しまれている東京・高尾山で、ツキノワグマの姿が確認された。
八王子市によると、8月20日午後11時ごろ、高尾山自然研究路1号路付近の山中で、設置されたカメラにツキノワグマ1頭が映っていた。設置者が9月16日に映像を確認し、同日、東京都を通じて市に情報が提供された。
高尾山は都心からのアクセスもよく、軽装の観光客も多い身近な山だ。これからの行楽シーズン、登山ツアーを予約している人もいるだろう。
では、「クマが出たと聞いて怖くなった」という理由でツアーをキャンセルした場合、取消料はどうなるのだろうか。
●「クマが怖い」だけなら原則、取消料が必要
八王子市によると、高尾山周辺はもともとツキノワグマの生息域にあたるという。
今回の目撃情報を受けて経過観察がおこなわれているが、新たな足跡やフンなどの痕跡は確認されていないという。
八王子市は、早朝や日没後など暗い時間帯の入山をできる限り控え、熊鈴など音の出るものを携帯するよう呼びかけている。
旅行会社があらかじめ行程や旅行代金を決めて参加者を募集する「募集型企画旅行」の場合、「標準旅行業約款(募集型企画旅行契約の部)」が参考になる。
約款16条1項では、旅行者は所定の取消料(出発何日前かによるが、目安としては代金の20%〜50%程度)を支払えば、旅行開始前に契約を解除できる。つまり、「クマが怖いので行きたくない」という旅行者側の判断でキャンセルする場合、原則として取消料がかかる。
●登山道が閉鎖されたら?
ただし、取消料を支払わずにキャンセルできる場合もある。
標準旅行業約款16条2項3号では、天災地変や官公署の命令などによって「旅行の安全かつ円滑な実施が不可能」となったり、そのおそれが「極めて大きい」ときには、旅行開始前であれば取消料なしで契約を解除できるとしている。
キャンセル料がかかるかどうかは、主観的な不安ではなく客観的な状況で判断される。
たとえば、クマの出没を受けて登山道が閉鎖されたり、自治体から入山を控えるよう強い要請が出されたりして、安全な登山が難しくなった場合には、この規定が問題になりうる。
一方、近くでクマが目撃されたというだけで、直ちに無料キャンセルできるとは限らない。実際の出没状況や行政による規制、登山道の閉鎖状況などを踏まえて判断することになる。
今回、八王子市では8月20日に、熊が夜間に1回、1頭確認されたのみで、新たな痕跡はなく、市の対応も「危機レベル1」の注意喚起にとどまり、入山禁止などの措置は取られていない。
そのため、現在公表されている事情だけから、当然に取消料なしでキャンセルできるとは言いにくい。
●旅行会社から中止するケースも
逆に、旅行会社がツアーを中止することもある。
標準旅行業約款17条1項7号では、天災地変などによって旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となったり、そのおそれが極めて大きくなったりした場合、旅行会社側から契約を解除できるとしている。
旅行会社が中止した場合、旅行者は取消料を負担する必要はなく、旅行代金は全額払い戻される。
今後、クマの目撃が相次いだりすれば、状況は変わる可能性がある。
キャンセルを考える場合は、まず旅行会社に、ツアーを予定通り実施するのか、キャンセルした場合の扱いはどうなるのかを確認したほうがよいだろう。
なお、ガイドツアーや現地集合型のイベントなどでは、契約内容や規約によって扱いが異なる場合がある。