夫婦共用のパソコンで、夫が生成AIに「不倫相手」と温泉へ行く相談をしていることに気づいた――。そんな女性からの相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。
女性は、夫がマッチングアプリを利用し、女性と会っていることまでは突き止めたといいます。
そんな中、女性は自宅のパソコンからあるものを見つけてしまいました。夫がAIに旅行の相談をしている履歴で、AIに「誰と行きますか?」と聞かれて「不倫相手」と答えていたそうです。女性はショックで不眠になったといいます。
女性は、AIとのやりとりが不貞の証拠になるのか判断に困っているようです。また、肉体関係を立証できず「親密な交際」にとどまった場合でも、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるのでしょうか。
濵門俊也弁護士の監修のもと、解説します。
●「冗談で書いただけ」と反論される可能性も
法律上の「不貞行為」は、一般に、配偶者以外の人と自由な意思に基づいて性的関係を持つことをいいます。
今回、夫は生成AIとのやりとりの中で、温泉旅行に同行する人物について、自ら「不倫相手」と表現しています。
こうしたAIとの会話履歴も、裁判などで証拠として提出すること自体は可能です。夫自身が入力したものだと確認できれば、夫が相手女性との関係をどのように認識していたのかを推認する一つの材料になると考えられます。
ただし、夫が「不倫相手」と書いていたからといって、それだけで法律上の不貞行為、つまり肉体関係まで認められるとは限りません。
たとえば、夫から「冗談で書いただけだった」「親密な女性を『不倫相手』と表現しただけで、肉体関係はない」などと反論される可能性があります。
そのため、AIとの会話履歴だけでなく、ほかの証拠と組み合わせて、肉体関係があったことを立証していくことが重要になります。
一般的に不貞の証拠としては、2人でラブホテルや宿泊施設に出入りして一定時間滞在したことがわかる写真や動画、宿泊記録、肉体関係があったことをうかがわせるメッセージなどが考えられます。
●肉体関係が証明できなくても慰謝料は請求できる?
では、肉体関係を示す決定的な証拠がなく、「親密な交際」までしか立証できなかった場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか。
不貞を理由とする慰謝料請求では、肉体関係の有無が重要になります。配偶者が異性と2人で食事や旅行をしたり、頻繁に連絡を取り合ったりしていたからといって、それだけで当然に慰謝料が認められるわけではありません。
もっとも、肉体関係を立証できなければ、慰謝料が認められる可能性がまったくないわけでもありません。
肉体関係がなくても、交際の態様や程度によっては、社会通念上許される範囲を超えて夫婦の平穏な婚姻生活を侵害したとして、不法行為が成立する可能性があります。
たとえば、交際期間や親密さ、連絡の内容や頻度、2人で旅行をしていたか、夫婦関係にどのような影響を与えたかなど、さまざまな事情を総合的にみて判断されることになります。