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三菱自動車マネージャーの練炭自殺、労災認定 「新型車の発売前に業務多忙となった」
記者会見のようす(2020年6月17日/弁護士ドットコム撮影)

三菱自動車マネージャーの練炭自殺、労災認定 「新型車の発売前に業務多忙となった」

三菱自動車工業の課長職相当だった男性(当時47歳)が、会社の寮で自殺したのは、業務が原因の精神疾患によるものだったとして、三田労働基準監督署が労災認定をしていたことがわかった。認定は、5月28日付。遺族とその代理人が6月17日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。

●強いストレスを受けていた

遺族の代理人をつとめた秋山直人弁護士によると、亡くなった男性は1993年、新卒で三菱自動車に入社。エンジニアとして、長く商品開発に携わっていたが、2018年1月から、それまで経験のなかった商品企画部に配属された。

日産自動車と共同開発した新型軽自動車(三菱eKワゴン、eKクロス)の発売前、担当マネージャーとして、両社の意向を調整する業務に追われる中で、板挟みになって強いストレスを抱えていたという。

男性は単身赴任先の寮に入っていたが、平日夜も寮内で会社のノートパソコンを使って仕事をしていた。休日は、関東地方の家族が住む自宅に帰っていたが、そのときも自宅近くの図書館で同じように仕事をしていたという。

2019年2月7日、男性は会社の寮で、練炭自殺をはかって亡くなった。

●三田労基署に労災認定された

三田労基署は、(1)亡くなる2日前に「気分(感情)障害」(うつ病を含む)を発病した、(2)発病前1カ月は、139時間31分の時間外労働時間だったと認定した。

そのうえで、発病前1カ月に、新型軽自動車の発売を控えて業務多忙になったことが、労災認定の基準である「心理的負荷」の強度を「強」だったとして、業務起因性をみとめた。

しかし、自宅労働はほとんど算入されなかったという。

●健康組合支給のスマートウォッチを常に装着していた

時間外労働時間は、社内システムのログイン・ログオフデータなどをもとに算出された。間接的ではあるが、重要な役割をはたしたのが、会社の健康組合から支給されていたスマートウォッチだった。

健康管理のため、男性は常に腕に装着していたという。スマートウォッチと連携するアプリには、睡眠時間が記録されていた。その記録からは、発病前1カ月のうち睡眠時間が6時間を満たない日が22日間あり、うち5時間に満たない日が16日間あったことがわかった。

●遺族「悲しみは癒えることがありません」

男性の妻は、この日の会見で「労災の認定を受けることができましたが、かけがえのない大切な家族を失ってしまった私たちの悲しみは癒えることがありません。今後、主人と同じような第2、第3の犠牲者がなくなるよう、仕事の量に見合う人員の配置や社員を思いやる会社の管理体制の整備を心から願っております」とコメントした。

三菱自動車は、弁護士ドットコムニュースのメール取材に「当社社員が亡くなったことを重く受け止めております。現在、詳細を確認しております」と回答した。

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