私立の非常勤講師らは3月24日、東京・霞が関の文部科学省記者クラブで会見し、「休業補償が支払われるのか不安」、「コロナの雇い止めはやめてほしい」と声をあげた。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、全国の公立の小・中・高・特別支援学校は3月2日から休校となった。私立学校の多くも準じる形で休校対応を進めたが、公立校の教員が10割の休業補償を受けられるのに対し、私立校では補償は一律ではない。突然の休校により収入が断たれた講師は会見で苦境を訴えた。
●授業がなくなれば、給料も支払われなくなるかもしれない
コロナ休校により私立の非常勤講師たちが経済的困窮に陥る可能性が出ている。
私立校で働く講師は「専任講師(企業における正社員に該当)」、「常勤講師(契約・有期雇用契約)」、「非常勤講師(パート・アルバイト)」の3種に分かれる。非常勤講師への給料は「授業コマ数」と「コマ単価」の掛け算で支払われるため、授業がなければ給料が払われなくなるのだ。
私学教員ユニオンのもとには、新型コロナの休校による相談が私学の非常勤講師から寄せられている。学校の仕事の手取りは月十数万円で、多くの非常勤講師が学校の掛け持ちや塾のアルバイトで糊口をしのいでおり、休校となれば生活が破綻してしまう。
ユニオンの佐藤学さんは「専任や常勤講師に関して給料カットの話は出ていないが、非常勤講師にしわ寄せがある。非常勤講師は公立の先生の1.5〜2割、私立の3割を担っている。コロナでの雇い止めを不安視する声も多かった」と話す。
●休業補償ゼロ回答も
私学教員ユニオンに寄せられたコロナ関連の相談では、教育関係者(公立教員や私立教員、スクールバスの運転手など87人)のうち、49人が非常勤雇用だった。
「休業補償の支払い」については、「支払われるか不明」(43人・49.4%)、「支払われないと通達済み」(28人・32.2%)、「その他(半分支払われるなど)」(16人・18.4%)という結果になった。
約8割が休業補償ゼロ回答か、支払いについて説明がなく不安な状況にあることがわかる。
会見に出席した私立中高一貫校の非常勤講師の男性Aさん(30代)は、コロナによって勤務先の学校が2月28日から休校となった。Aさんの1か月の手取りは約20万円。19コマの授業と週2回の部活動(2コマと計算)を合わせた21コマの金額だ。塾講師のアルバイトもしている。
「3月の授業がなくなって不安ですが、学校から給料の説明は一切ありません。非常勤講師は元々、雇い止めを恐れて、お金や有給休暇の話ができません。塾まで休みにならないか心配です」と窮状を訴えた。
●非常勤講師「明日、給料の振込はゼロかもしれない」
Aさんの給料支払日は毎月25日。いつもであれば、明日は3月分の給料が支払われるはずだ。
「明日(25日)、私の通帳には学校からの振込がないかもしれない。本当に不安です。教員が不安定な状況で生徒を教育することは困難です。貯金もなく、家賃が払えないかもしれません。生活が厳しいので、休業補償は全額出してもらいたい」と話した。
すでに授業を再開した学校もあるが、Aさんの学校からは今後について「特に連絡はない」そうだ。「このように経営が苦しくなったときに調整弁にされるのが非常勤講師」と唇を噛む。
数年前から私立高校で非常勤講師として働く男性Bさん(20代)も、学年末試験の期間をのぞいて3月から休校になった。
学校に休業補償の説明を求めたところ、「職員室に待機していれば給与を支払う」と回答があったため、テスト当日まで作業をして過ごしたという。最近になって授業も再開した。
「私はなんとか乗り越えられそうです。私立の非常勤講師の中では不幸中の幸いのケースだと思う。1円の補償もない私学も現実にあります」
生活不安の原因は、全国一斉休校にあるが、その対応に不満はない。
「生徒が一番大事なので」とAさんが言えば、Bさんも「感染を防ぐ意味では適切だった。ただ、あまりに話が急で公立私立問わず、教育現場につくものは混乱の中で右往左往する状態だった」と引き継いだ。
●文科省に10割補償を要請
私学教員ユニオンは24日、文科省と要請書を送付。コロナ休校となった私立の非常勤講師の賃金も公立と同じく10割補償とする措置を求めた。回答は1週間後になる。
私立学校の業界団体にも要請の申し入れをしたが、対応してくれなかったという。