日本語学校大手の「千駄ヶ谷日本語教育研究所付属日本語学校」を運営する株式会社ベスト・コミュニケーションズに対し、新宿労働基準監督署が是正勧告を出したことを受けて、同校の日本語を教える非常勤教員らが1月27日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見した。
●サービス残業強制される日本語学校教員
会見した非常勤教員らによれば、同校の非常勤教員には授業1コマあたりの給与が支払われているが、授業時間外の業務が多くサービス残業が強いられているのが実態だという。非常勤教員らは2019年12月19日に新宿労働基準監督署に申告した。
その後、新宿労基署が臨検に入り、就業規則作成の手続き違反や、採点や学生対応に対して賃金を支払わなかったことなどが労基法15条に違反するとして、是正勧告を出した。
●準備などあわせると実質「時給300円くらい」
労基署に学校の実態を申告した1人、日本語教師ユニオン代表の塚越智世江さんは、同校に2016年4月から勤務する4年目の非常勤教員だ。
塚越さんによれば、1コマ(45分)あたりの給料は教員によって異なるが、勤務4年目の塚越さんで1コマ2010円。授業時間以外にも、採点や学生の面接、授業準備にも時間は割かれる。授業準備に6時間以上かかる場合もあり、給料に反映されない労働時間を含めると「時給300円くらい」だと言う。
7時間半に及ぶ遠足の引率は手当として3000円だけが支払われ、本給は支払われなかった。「学校側は『楽しいからいいじゃないか』と仕事と見なしませんでした」(塚越さん)。
そのため、非常勤教員はダブルワークが基本で、コンビニやスーパーのバイトをしている人がほとんどだという。同校で午前8時半〜遅くて午後7時までほぼフルタイムで働く非常勤教員の昨年の年収は約164万円だった。このような環境で、新人非常勤教員の2年未満の離職率も「8割」と高いそうだ。
「日本語教師を国家資格化しようと政府も動いている。外国人人材の受け入れも進む中、我々の仕事が重要になるのに、我々の待遇のひどさが置き去りにされている」(塚越さん)
ユニオンの上部団体で大学等教職員組合の役員を務める佐々木信吾さんは会見で、このようにサービス残業を強制するやり方は大半の日本語学校で共通しているといい「大手に是正勧告が出されたことで、業界全体の悪弊を改善する契機にしたい」と訴えた。
弁護士ドットコムニュースの取材に、ベスト・コミュニケーションズ社は「コメントできる代表者が外出中」と返答した。(1月27日14時15分現在)