エスカレーターで片側を空け、もう片側を歩いて進む。多くの人が当たり前のように続けてきたこの習慣を、鉄道会社はいま「やめてほしい」と呼びかけている。
全国の鉄道事業者は共同で、エスカレーターを「歩かず立ち止まろう」と促すキャンペーンに取り組む(7月21日から)。その一環として、JR西日本が公式X(@news_jrwest)で9日に実施を告知したところ、投稿は思わぬ広がりを見せた。
●SNSで噴き出した「片側空け」への本音
まず目立ったのが、キャンペーンを歓迎する声だ。「これが広まって定着したらいいのだけど」「ほんとに危ないからやめてほしい」と、立ち止まっての利用を後押しする投稿が相次いだ。
「エスカレーターを駆け上がったり駆け下りたりするの、マジで危険なので、迷惑ですわ」と、歩行の危うさを訴える声もあった。
さらに、片側を空ける“暗黙のルール”そのものへの違和感も噴き出した。
「立ち止まったら後ろから文句を言われる」「当たり前のようにカバンをぶつけてガンガンいくやつ」への苛立ちに加え、「わざわざ(片側を)空けてくれているのに、歩くのはなんでだろう」と、慣習の意味を問い直す投稿も見られた。
そのうえで、「片側を空けるために長蛇の列になっている。お急ぎの方は階段でいいのよ」「エスカレーターで歩くなら階段に行けばいい」「歩く人用に片側を空ける文化を無くすべきだ」と、慣習の見直しを求める声も目立った。「埼玉県や名古屋市のように、各自治体が条例化できないものか」と、ルール化を望む意見もあった。
●JR西日本に聞いた「現場で起きていること」
片側空けをめぐる議論はSNSでたびたび盛り上がるが、駅の現場では実際にどんな声が上がっているのか。弁護士ドットコムニュースは、JR西日本に取材した。
同社によれば、「歩く派」と「立ち止まる派」の双方から困りごとが寄せられている
まず目立つのが「接触」の問題だ。
エスカレーター上を歩いて上り下りする人に横をぶつけられ、「危険な思いをした」という声が寄せられているという。
さらに、立ち止まって利用していた人が、「片側は空けるべきだ」と主張する人と口論になるケースもあるそうだ。
一方で、片側にずらりと人が並ぶこと自体への不満もあるという。
「片側に立つ人で混雑して、かえって危ない」という指摘や、知り合いと2列で立って利用していたところ、後ろの利用者とトラブルになったという例もあるとしている。
立ち止まりたい人、歩きたい人、2列で乗りたい人——。それぞれの利用スタイルがぶつかり合い、トラブルの火種になっている実態がうかがえる。
●亀のイラストで「立ち止まってもカメへん」
JR西日本では、全国共通のキャンペーンとは別に、独自の「さわやかマナーキャンペーン」を2018年から続けている。動物のイラストと関西風のギャグでマナーを呼びかける「マナー生き物ペディア」がその一つだ。
2026年3月からは、亀のキャラクターを起用。「立ち止まってもカメへん(=構へん)」と、エスカレーターであわてず立ち止まっての利用を促すポスターを掲出している。