世の中には、ひょんなことから、浮気を疑ってしまう人がいるようです。
弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性から寄せられた相談です。彼女の仕事は、お弁当配達サービスで、ふだんから、あるお客さん(高齢女性)の息子と、集金や配達について、ラインやメールでやりとりをしていました。
ところが、ある休日、息子の妻から「主人と別れて!」「あなたのせいでボロボロよ!」という電話が突然かかってきたそう。そんな電話は1時間にも及びました。浮気はしておらず、どうやら、ラインなどの履歴を見た妻による勘違いだったようです。
その後、その妻からは音沙汰はなかったけれど、今度は、自分の夫から「何もなければ電話ないだろ!」「出ていけ!」と疑われてしまったそうです。女性は「これで本当に離婚することになったら…」と心配しています。離婚にくわしい橘里香弁護士に聞きました。
●今回のケースでいえば「慰謝料請求」はむずかしい
――離婚を防ぐためにはどうすればよいでしょうか?
夫婦関係は信頼を基礎とするものです。まずは、夫に対して、丁寧に事情を説明して、誤解をとくよう試みるのがよいでしょう。できるだけ速やかに、ラインの内容などを示しながら、仕事上のやりとりしかないことを説明するのがよろしいかと思います。
――もし、本当に離婚になった場合、浮気疑惑をつくった相手に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
たしかに、あらぬことで疑われ離婚の危機ともなれば、慰謝料を請求したい気持ちにもなるかと思います。たとえば、民事上、名誉毀損として慰謝料を請求するためには次の(1)〜(4)すべてが必要であると考えられています。
(1)社会的評価を低下させる情報を流布したこと
(2)それにより現に社会的評価が低下したこと
(3)発言者の故意または過失
(4)損害と発言との因果関係
そして、情報の流布といえるためには、発言状況などから、他人に伝播する可能性が必要であると考えられています。
今回のケースのように、直接本人あてに電話をかけてきて発言したという状況の場合、その情報が他人に伝播する可能性があるとは言えないことから、慰謝料請求ということは難しいと思われます。
――こうした疑惑を投げられることは、男女関係では少なくありません。どのように対応するのがよいのでしょうか?
まずは、できるだけ早期に、浮気はしていないこと、仕事上のやりとりしかないことを毅然とした態度で説明するのがよいでしょう。初期の対応できちんと否定せず、時間がたってから否定すると、口裏合わせをした作り話では、との疑念を持たれてしまう危険もあります。
また、このような事件を乗り越えて夫婦関係を継続できるかは、それまでの信頼関係が影響します。日ごろから、夫婦間で絆を深められるよう、コミュニケーションをとることが大切なのではないでしょうか。