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離婚後の養育費は「低すぎ」だったのか? 日弁連の増額提言を考える
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離婚後の養育費は「低すぎ」だったのか? 日弁連の増額提言を考える

現在の養育費の決め方は適切なのかーー。日本弁護士連合会は11月末、離婚に伴う子どもの養育費の算定方式・算定表をまとめた提言を発表した。

現状の実務で使われている算定表はについては、「金額が低い」として、見直しを求める声が上がっていた。受け取る側の生活実態に合わせて1.5倍程度に引き上げる。法的な拘束力はないが、日弁連は「定着させたい」としている。

これまでの算定方式には、どんな問題があったのか。新しい算定方式にはどんな点が期待されるのか。深堀寿美弁護士に聞いた。

●これまでの算定方式は「簡単に迅速に定めること」が主な目的だった

日弁連では、11月30日から、養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表についての提言をホームページで公開しています。(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2016/161115_3.html

現在、実務で広く使われている簡易算定表は、実は厚生労働省や最高裁判所が責任を持って定めたものではなく、ある一つの私的研究会が養育費を「簡単に迅速に定めること」を目的として法律雑誌に掲載し、提案したものにすぎません(判例タイムズ1111号)。

表が付いていて使い勝手がよかったために、実務で広く使われるようになってしまいました。ただし、この算定表による金額は、統計の使い方により、あるいは、支払う側の負担「感」も考慮したためか、低額にすぎると言われていました。

しかし、そもそも養育費とは子どもの生活維持のために支払われるものですから、子どもの生活維持のための金額はどうあるべきかを第一に考えて決めるべきです。離婚後のひとり親家庭の子どもの貧困率の高さは社会的問題になっています。

その解消のためにも、養育費(婚姻費用も)はどうあるべきかを、日弁連が考えてこの提言を行っています。そう考えて計算すると、現在広く使われている算定表よりも概して養育費(婚姻費用)が高くなりました。

この提言では、現在、実務で広く使われている「表」と同じように、養育費を支払う側の親と子どもと同居する側の親の年収を見ていけば、簡単に養育費や婚姻費用の金額がわかるようになっています。また、そう算定した方式も説明しています。

●そもそも、離婚の際、どんなことを取り決めておくべき?

養育費については、毎月何日までに何円を、子どもが何歳になるまで、どこの金融機関に振り込むか、などを具体的に決めることをお勧めします。

また、子どもが中学や高校・大学に進学するときには、まとまったお金も必要なので、その負担についても決めておければ決めた方がいいでしょう。

面会交流についても、同様に、どのような頻度で、どのように父母あるいは子どもとの間で連絡を取り合って行うかを決めておくことをお勧めします。「言った・言わない」の争いを避けるためには、約束事を紙に書いて、お互いが署名した書面を持ち合うことをお勧めします。

離婚を考えている方は、「実際にはどのような額が決められているか?」「離婚後どのような面会交流が行われているか?」といった事情をご存じない場合が大半だと思います。取り決めをする前に一度、弁護士に相談する方がいいですし、父親と母親だけで取り決めが困難な場合には弁護士を介入させた方がいいです。

例えば、配偶者からDVを受けて離婚するなど、離婚時に当事者同士で冷静に話し合うことが難しい場合、離婚後の養育についてどのように取り決めればいいのでしょうか。そのような場合には、父親と母親が2人だけで取り決めをすることは難しいですよね。

父親と母親と子どもとの関係は、各家族でそれぞれに違います。そこで、一般的に養育費や面会交流について「これがよい」と言うことができません。まずは、各家族の具体的な事情を弁護士に相談され、どのように取り決めていくのがよいかアドバイスを受けることをお勧めします。話し合いが困難な場合は、弁護士を介入させて取り決めをする、あるいは家庭裁判所の調停を利用することをお勧めします。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

深堀 寿美
深堀 寿美(ふかほり ひさみ)弁護士 福岡第一法律事務所
1993年福岡県弁護士会登録。以降、福岡県弁護士会の両性の平等に関する委員会委員長や、日弁連の両性の平等に関する委員会の委員長も務め、現在も当該両委員会の委員。今回発表された提言の策定にも関与。ジェンダー法学会会員。

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