「不倫したことを相手の妻に言いふらされました」——こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の女性は、ある男性と不倫関係にありましたが、相手の妻に不倫の事実がバレてしまったそうです。相談者は不倫相手の妻と話し合って、不倫については「いったん決着した」そうです。
しかしその後、不倫相手の妻がその事実をママ友や知人など、不特定多数の第三者に口外していることが判明したそうです。なお「相手方の奥様とは顔見知り」だといいます。
たしかに不倫も違法ですが、不倫の事実を言いふらされた場合に、何らかの法的措置をとることは可能なのでしょうか。
●不倫の事実の暴露も「名誉毀損」や「プライバシー侵害」にあたる可能性がある
不倫相手の妻が相談者の不倫の事実を不特定多数の第三者に告げているという点について、民法上の不法行為(民法709条)として、名誉毀損またはプライバシー侵害が成立する可能性があります。
1)名誉毀損
名誉毀損とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損すること」を要件とします(刑法230条1項。民事上の不法行為についても同様の考え方をします)。
- 「公然と」:不特定または多数の人が認識できる状態を指し、ママ友や知人に事実を話す行為はこれに該当します。
- 「事実を摘示し」:具体的な事実を示すことです。不倫の事実はこれに該当します。
- 「名誉を毀損」:人の社会的評価を低下させることです。一般的に、不倫の事実は人の社会的評価を低下させるものと認められます。
今回の事例では、不倫の事実が真実であったとしても、その事実を公然と告げることで社会的評価が低下すれば、原則として名誉毀損の不法行為は成立します。
2)プライバシー侵害
プライバシー侵害は、私生活上の事実であって、一般人の感受性を基準として公開を望まない事柄を、みだりに公開されない利益を侵害された場合に成立します。
不倫の事実は、本来、私生活上の事柄であり、相談者にとって一般に公開されたくない情報であるといえます。そのため、たとえ真実の事実であったとしても、それを第三者に言いふらす行為は、プライバシー侵害の不法行為に該当する可能性が高いといえます。
以上のように、不倫相手の妻が相談者の不倫を言いふらす行為は、名誉毀損またはプライバシー侵害として、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求の対象となる可能性があります。
●慰謝料請求にはリスクも
不倫相手の妻の行為が不法行為に該当するからといって、直ちに慰謝料請求に踏み切るのは慎重な検討が必要です。
なぜなら、そもそも相談者自身が以前に不貞行為という不法行為(民法709条)を犯しており、その結果、不倫相手の妻に対して慰謝料を支払う義務を負っている可能性があるためです。
不倫相手の妻から相談者へも不貞行為に基づく慰謝料請求がされる可能性があり、相互に慰謝料を請求し合うという事態に発展しかねません。
なお、個別具体的な事情にもよりますが、不貞行為に対する慰謝料請求の金額の方が、名誉毀損・プライバシー侵害に対する慰謝料請求の金額よりも大きくなる可能性が高いと思われます。
そのため、法的措置をとる際には、自分自身の不貞行為の責任も考慮に入れた上で、総合的に判断する必要があります。