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離婚事件は情報戦!弁護士が教える、別居前までに手に入れるべき6つの情報
画像はイメージ(Fast&Slow / PIXTA)

離婚事件は情報戦!弁護士が教える、別居前までに手に入れるべき6つの情報

夫婦円満な生活を送るためにも、できれば事前にトラブルの芽は摘んでおきたいものです。そこで、年間100件以上離婚・男女問題の相談を受けている中村剛弁護士による「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」をお届けします。

連載の第22回は「離婚事件は情報戦である」です。これまで離婚事件を扱う中で、中村弁護士は「お金に関すること(婚姻費用・養育費と財産分与)は情報戦だ」と痛感しているそうです。

「情報を事前にどこまで取得できているかが、後の交渉や調停において非常に重要になってきます」と呼びかけています。果たしてその理由とは?

●婚姻費用・養育費における「情報」の重要性

婚姻費用・養育費は、第20回第21回で解説したとおり、基本的には双方の収入を基準として定めることになります。

しかし、最近は共働きも増えてきたせいか、「相手の収入がいくらなのか把握していない」というケースを多々見てきました。ご自身でも振り返ってみて下さい。相手の年収がいくらなのか、ある程度正確に把握されているでしょうか。

単純に、会社員として普通に1社に勤めているだけのケースであれば、後からでも源泉徴収票を見ればわかりますので、それほど大きな問題となりません。

artswai / PIXTA

しかし、例えば、相手方が自営業者である場合、会社経営をしている場合、相手の親の会社で働いていて、収入についてある程度調整できる状況である場合、副業をしていて複数の収入先がある場合、不動産投資などをしていてその収入がある場合など、単に源泉徴収票などを見ただけでは、相手の正確な収入を把握できないケースがあります

また、自分が会社を経営していたり、親族が会社を経営している場合、別居した後に、婚姻費用額を下げるために、給与等を意図的に下げられるケースもあります。

婚姻費用・養育費は、相手方の収入が正確に把握できない限り、適正な金額を算定することができません。特に、副収入があって確定申告をしているケースなどでは、事前に確定申告書(第一表の1ページ目だけでなく、2ページ目以降も)などのコピーを取っておくと、後々不当に安い婚姻費用・養育費となってしまうことを防ぐことができます。

Rhetorica / PIXTA

●財産分与における「情報」の重要性

次に、財産分与においては、双方の預貯金や有価証券(株式や投資信託など)、不動産、退職金など、あらゆる財産を精査した上で、夫婦共有財産となるものについて、2分の1ずつ分けるのが原則です。

しかし、調停や訴訟になった段階で、相手方から全ての財産資料を開示してもらえるとは限りません。本来であれば、全ての財産資料を開示しなければなりませんが、開示されないこともしばしば見られます。

「●●銀行の▲▲支店に口座があるはずだ」など、ある程度具体的にあたりをつけて特定できるのであれば、裁判所を通じて直接銀行などに問い合せることもできるのですが、その手がかりもないとなると、どこに問い合せればいいのかがわからず、開示させることにも限界があります。

CORA / PIXTA

開示されない財産資料があると、それは事実上2分の1の対象財産から除外されてしまうため、本来受け取れるはずの金額よりも少ない金額しか認められないことになります。

この点、自宅不動産については、どこにあるかもわかっていますし、登記を取れば詳細も明らかになりますので、あまり心配する必要はありません。また、自家用車も、同様に所在を把握している場合が多いので、それほど重要ではないでしょう。さらに、勤務先の退職金も、勤務先はすぐにわかると思いますし、そこに問い合わせることも可能なので、それほど焦って取得する必要はありません。

情報取得の必要性が高いのは、預貯金口座(定期預金、外貨預金を含む)、証券口座、有価証券(相手が経営している会社の株式など)、生命保険(学資保険などを含む。掛け捨てを除く)、自宅以外の不動産(アパートを持っている場合など)、私的年金(企業年金やiDeCoなどの個人年金)などです。

これらは、事前にある程度の情報を持っていないと、後から開示を求めることも難しくなります。

●いつまでに情報を手に入れておく必要がある?

基本的に、別居前までに手に入れておく必要があります。別居後は、相手方の財産の情報を得ることは基本的に難しいと考えて下さい。

そのため、自分が別居する際には、別居前までにある程度調査しておく必要がありますし、相手が別居する場合でも、夫婦関係が悪化して相手が別居に踏み切りそうな雰囲気を感じたなら、相手が別居に踏み切る前に、自分としても調査しておく必要があります。

●どこまでの情報が必要?どれを見ればわかる?

口座番号などの詳細まで把握していなくても、また、金額まで正確に把握していなくても、以下の情報があれば、後からでも裁判所などを通じてある程度調査を行うことが可能です。

上記の情報取得の必要性が高いものについて、どこまでの情報が必要かを以下のとおり示しますので、参考にしてみて下さい。

いかがでしたでしょうか。離婚調停や、離婚訴訟を進める上で不利とならないためにも、相手の収入及び資産状況は、普段からしっかりと把握しておく必要があります。特に、夫婦関係が悪化しつつあって、離婚の可能性があるなら、別居に至る前に、これらの情報をしっかりと押さえておきましょう。

(中村剛弁護士の連載コラム「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」。この連載では、結婚を控えている人や離婚を考えている人に、揉めないための対策や知っておいて損はない知識をお届けします。)

プロフィール

中村 剛
中村 剛(なかむら たけし)弁護士 中村総合法律事務所
立教大学卒、慶應義塾大学法科大学院修了。テレビ番組の選曲・効果の仕事を経て、弁護士へ。「クライアントに勇気を与える事務所」を事務所理念とする。依頼者にとことん向き合い、納得のいく解決を目指して日々奮闘中。

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