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病気&退職のWパンチで生活困窮したシングルマザー、DV元夫に「養育費を請求したい」
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

病気&退職のWパンチで生活困窮したシングルマザー、DV元夫に「養育費を請求したい」

10年前に離婚した元夫に養育費を請求したいが、どうすれば良いのか。インターネット上の掲示板に、こんな相談が投稿されました。

投稿者は、10年ほど前に、当時2歳の子を連れて離婚。離婚原因は、「旦那が理由なく無職になったこと」と、「浮気、数回のDVなど」とのこと。「子と元旦那の関わりを絶ちたい」という思いから、慰謝料や養育費は一切もらわずに協議離婚したそうです。

離婚後、実家には頼れず、10年間一人で子育てしてきたという投稿者。しかし数ヶ月前、ある病気を発症し、仕事を辞めることになってしまいました。その後は預貯金を崩して生活していたそうですが、「いつ回復するとも分からない日々に精神的にも金銭的にも焦っています」と語ります。

投稿者は、「元旦那から養育費として月数万円でも貰えたら」と考えています。しかし、「今更連絡するのは止めた方がいいでしょうか?」と迷いも。

今回のケースのように、離婚してすでに月日が経ってからでも、夫に「やっぱり養育費を支払って」と要求できるのでしょうか?渡邊 幹仁弁護士の解説をお届けします。

A. 子どもが20歳になるまでは養育費を請求できる

養育費とは、未成熟子(原則20歳未満の子)を健全な社会人に育てるために必要なお金です。離婚してから年月が経っていたとしても、お子さんが20歳になるまでは、別れた相手に養育費を請求することができます。

一般的に、養育費を支払う義務が生じるのは、養育費の請求を求めた調停または審判の申立てを行ったときからです。申立てから審判までに6か月かかっても、通常、その6カ月分の養育費は支払いが認められます。

しかし今回のように、現時点から10年分をさかのぼって支払ってもらうのは難しいでしょう。ただし、別れた相手と話し合って合意が得られれば、いつまでもさかのぼって支払ってもらえます(裁判所での調停も同様です)。

なお、当事者の間で、「養育費は不要」ということが「真意で合意」されたと言える場合には、法的拘束力があり、原則として有効とされます。

しかし例えば、離婚する際に揉め事が起こり、売り言葉に買い言葉のような形で「養育費なんかいらない!」などと言った場合には、「真意で合意」したと評価されない場合もあるでしょう。そのような場合には、仮に「養育費なんかいらない」などの発言があったとしても、養育費を請求できる可能性があります。

また、仮に「真意で合意」したと言える場合であっても、その後、事情が変化して、合意を維持することがお子さんの養育上、著しく不都合となることもあるかもしれません。そのような場合は、養育費を請求しないという合意を変更して、養育費を請求できる可能性があります。

さらに、仮に父母の間で養育費の請求をしないと合意したとしても、合意の当事者でないお子さん自身の扶養請求権(一定の親族関係にある者の間で、扶養が必要な者が扶養可能な者に対して扶養を求める権利)を根拠として、父に対して生活費の支払いを求めることは可能です。

今回のケースのように、元夫に暴力を振るわれていた場合、「養育費を請求したくても、居所をつきとめられて暴力を振るわれるのが怖い」という場合もあるかもしれません。

裁判所には、暴力などのおそれがあることを理由に、現住所を相手に知らせないように申し入れることで、現在の住所を知られないようにすることができます。また、書面の送付先などについては、自宅ではなく依頼した弁護士の事務所にするなどの対応も考えられますので、現住所を突き止められるリスクは回避できるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

渡邊 幹仁
渡邊 幹仁(わたなべ みきひと)弁護士 そらいろ法律事務所
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件や、刑事事件・犯罪被害事件を数多く取り扱っている。

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