養育費が支払われないーー。弁護士ドットコムに、そのような相談が複数寄せられています。
「元夫は当時不倫していた不倫相手と交際しており、SNSにバーベキューや遊園地に行った写真をアップしていますが、養育費は払ってもらえません」、「元妻が養育費を支払いません。再婚し、専業主婦なので収入がないと主張しています」など、悩んでいる人は少なくありません。
離婚や養育費が決まったばかりという人からも、実際に支払われないのではないかという不安の声が寄せられています。
離婚が決まって間もないという女性は「これまでの経験から、ダメ夫は絶対に支払いません。どうしたら確実にもらえるのでしょうか」と質問しています。相談者によると、夫は浪費家ではあるものの、収入も高く、親から相続した不動産など財産もあるようです。
相談者は「養育費の一括請求をしたい」と考えているようですが、そのようなことはできるのでしょうか。また、一括払いの場合は課税対象となるのでしょうか。森本明宏弁護士の解説をお届けします。
●夫婦間で合意が成立すれば、一括請求は認められる
ーー養育費の一括払いを請求することはできるのでしょうか。
養育費は、子の成長段階に応じた必要な監護養育のための費用であり、月々具体的に発生するものです。原則として一括払いの請求は認められず、定期金による支払(毎月ごとの支払)をするよう家庭裁判所は判断を示しています。
夫婦間で養育費の一括払いの合意が成立すれば、一括請求は認められます。しかし、後で述べますとおり、課税上の問題を検討する必要があり、注意が必要です。
養育費は、原則として子が成人に達する月まで支払が継続されます。離婚時の子の年齢によっては離婚後10年、15年、20年近くの期間をかけて毎月支払われることになります。
したがって、その間に養育費を支払う者が、亡くなったり、職を失って収入が途絶えたり、再婚により、新たに扶養すべき子が産まれたりするなど、養育費の支払いが滞ることも十分に考えられます。
そこで、長期間にわたる確実な履行が期待できない場合、養育費の一括払いを受けることには大きなメリットがあるともいえるでしょう。
●一括払いを受けた場合、贈与税の課税対象になる場合も…
ーー養育費の一括払いを受けた場合、贈与税の課税対象になる場合があるのでしょうか。
はい、一括払いの場合、その点は注意すべきです。毎月ごとに支払われる養育費は原則として課税されません。しかし、将来の養育費はまだ具体的に発生していません。そのため、支払を一括で受けた場合には贈与にあたると判断されます。
ただし、一括払いを受けた場合でも、非課税とされる場合もあります。
信託銀行との間で、毎月一定額の均等割り給付を受けるものとする金銭信託契約を締結し、一方的な信託契約の解約をできないようにして、支払われる養育費の一定額が「子の年齢その他一切の事情を考慮して相当な範囲内のもの」であれば非課税とされています。
(弁護士ドットコムライフ)