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不倫した夫を「地獄に突き落としたい」 妻が「証拠写真」ネット公開するのはアリか?
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不倫した夫を「地獄に突き落としたい」 妻が「証拠写真」ネット公開するのはアリか?

夫の不倫が発覚したとき、離婚や別居といった直球をぶつける妻もいれば、「仕返し」という変化球をなげる妻もいる。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ある女性が「旦那にされた仕打ちを(不倫の証拠)写真付きでネットに公開したい」と、驚くべき計画を投稿した。

「旦那の仕事はインディーズのミュージシャン・作曲家で、ファンの女の子と不倫をしています。(不倫の)証拠写真は確保できました」。そこで「一回地獄に突き落としたいので、不倫相手の顔にはモザイク入れますが、旦那の顔はそのまま」という写真をネットに公開しようと考えているのだという。

もし実際に、このような写真を公開したら、法的に問題はないのか。「旦那や不倫相手から名誉毀損で訴えられてしまうのでしょうか? もし訴えられた場合、損害賠償金はいくらくらい請求されるのでしょうか?」と、投稿した女性も心配している。離婚や不倫トラブルに詳しい澤藤亮介弁護士に聞いた。

●不倫写真の公開は「私刑」に等しい

「本件のような不倫事案の場合、不倫された妻は、夫や不倫相手に対して、不貞行為を原因とする慰謝料請求を行うことができます。妻として被った精神的損害を慰謝料という『金銭』で償うよう求めることが、法律上本来あるべき形です。

今回のように誰でも閲覧できるインターネット上で不倫の事実などを公開して、夫や不倫相手に制裁を与えることは、いわゆる『私刑』に等しく、逆に加害者として民事上の請求や刑事処罰を受ける可能性もありますので、注意が必要です」

では、どのような写真を公開すると、法的な責任を問われるのだろうか。

「今回の相談事例では、どのような写真を公開するのか詳細がわかりませんので、3つのパターンを想定して、解説しましょう。

まず、公開するのが『マンションやホテルに一緒に入るような写真』だったとします。写真のみを掲載するのか、テキストも併せて掲載するのかなどにもよりますが、民事上の名誉毀損とプライバシー権侵害として、夫と不倫相手から慰謝料を請求される可能性があります。

また、不倫相手に対する慰謝料請求訴訟の中でも、プライバシー権侵害行為を理由に、反訴や別訴を提起され、その結果、取れるべき不倫慰謝料の額が減額されてしまうおそれもあるでしょう。

次に『配偶者の携帯に保存されていた画像』を公開した場合です。夫の携帯からデータを取得することは、形式的には夫のプライバシー権侵害となり得ます。しかし、現実的には慰謝料が発生するほど違法性が高い行為とまでは言えないことがほとんどかと思われます」

●「裸体写真」の場合には刑事責任の可能性

「最後に、公開したのが『裸体がうつっている写真』だった場合について説明します。被写体がどこまで写っているかにもよりますが、このケースでは、刑法上の『わいせつ物等公然陳列罪(刑法175条1項)』で、刑事処罰(2年以下の懲役または250万円以下の罰金・科料)を受ける可能性が出てきます。

また、これも被写体がどこまで写っているかにもよりますが、夫の顔はそのままでの掲載とのことですので、2014年(平成26年)11月に施行された『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』(いわゆるリベンジポルノ防止法)の『公表罪』(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)も成立する可能性があります。

さらに、民法上の名誉毀損やプライバシー権侵害として、慰謝料請求を受ける可能性があります。『マンションやホテルに一緒に入るような写真』のケースに比べて、裸体まで公開してしまうとなると、違法性が高いとみなされ、その慰謝料額は高額になる可能性が高いでしょう」

今回の相談者にかぎらず、配偶者の不貞行為に直面し、怒りのあまり「仕返し」を考える人は珍しくないだろう。だが、澤藤弁護士は次のように注意を促している。

「裁判外での交渉や裁判手続による慰謝料請求では、認められる金額や手続の時間的・経済的な負担も含め、納得がいかないという方もいらっしゃるかと思います。

しかし、法治国家の中で生活している以上、損害が発生した場合は法的手続で救済を求める必要がありますし、方法や程度によっては、本来得られる慰謝料が減るどころか、刑事処罰まで受ける可能性があることを十分認識した上で、ご自身が取るべき手段を慎重に検討されることが重要だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

澤藤 亮介
澤藤 亮介(さわふじ りょうすけ)弁護士 向陽法律事務所
東京弁護士会所属。2003年弁護士登録。2010年に新宿(東京)キーウェスト法律事務所を設立後、離婚、男女問題、相続などを中心に取り扱い、2024年2月から現在の法律事務所でパートナー弁護士として勤務。自身がApple製品全般を好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。

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